3DCGや映像、写真などを扱うクリエイターにとってPC選びは重要です。ですがPCと同じくらい、PCモニター選びも性能を吟味するべきです。プロでもない駆け出しなのにハイクラスのモニターが必要だろうか、と悩む人もいるでしょう。24インチ・フルHDのPCモニターを使っている人は、今がクリエイター向けのPCモニターへの買い替え時です。
最もNGなのは、テキトーにAmazonで一番安いPCモニターを買うことです。特にお金を稼ぐために本気で取り組みたいと思っている人は、クリエイター向けのスペックを最低限満たしたPCモニターを選んでください。
もちろん、最初から高価格のPCモニターをそろえる必要はありません。プロを目指す人が知っておいた方がいい「色」に関する知識や「PCモニターに関する用語」を知ったうえで、高コスパでお得なPCモニターを選ぶときのポイントをおさえておきましょう。
おすすめ高コスパPCモニター(必要スペック)
- アスペクト比:16:9
- 解像度:4K(3840px × 2,160px)
- パネル:液晶パネル(IPS・ノングレア)
- ディスプレイサイズ:27~32インチ
- 色深度(表示色数):10bit対応(約10.7億色)
- 色域:「Rec.709」「sRGB」それぞれカバー率99~100%
- 輝度(ダイナミックレンジ):「HDR10」「Display HDR 400」以上
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色の正確性・再現性を厳密にこだわる方は、以下の記事で「ハードウェア・キャリブレーション」対応のPCモニターをチェックしましょう。キャリブレーションによって、ディスプレイの「経年劣化」と「色の個体差」をカバーします。
カラーマネジメントモニターのおすすめ2選(クリエイターのためのキャリブレーションとは)
CGクリエイター向けPCモニターの重要な指標5つ
3DCG制作や映像制作を行うクリエイターがPCモニターを選ぶ際は、以下の5つの項目を確認しましょう。
参考:よくわかる、HDR徹底解説! HDRとは | EIZO株式会社
- 解像度・・・映像のきめ細やかさ
- フレームレート・・・映像の滑らかさ
- ビット(bit)深度・・・色・グラデーションのきめ細やかさ
- 色域・・・色彩の鮮やかさ
- 輝度・・・表現できる明るさ
PCの準備
・デスクトップPC(BTOパソコン):パソコンを自作する(自分でPCパーツを揃えて、自分で組み立てる)のが面倒な場合は、BTOパソコンを検討してください。
ネット上で構成パーツを指定するだけで、組み上がったパソコンが自宅に届きます。自作PCでありがちな、パーツ選びのミスも起こりません。出荷前に起動テストされているため、届いたらすぐにパソコンを使用できます。
3DCG制作のおすすめデスクトップPC【初心者/中級者/上級者】(BTOパソコンメーカー9選)
・ノートパソコン:3DCG制作のような重たい作業も、ノートPCで可能です。自宅でも色んな場所で作業したい、出先で作業したい、と思っているならノートPC一択です。パソコンに機動性を重視しない場合は、デスクトップPCの方が割安です。
このブログでは「Cinema 4D」を使って、3DCG制作を1人で完結できるようになるまでをサポートしています。筆者自身も手を動かしながら、毎日「Cinema 4D」を学習しています。「Cinema 4D」で稼げるよう一緒に頑張りましょう。
以下の記事では、「Cinema 4D」でできることを伝えつつ、大手3DCG制作ソフトの特徴を比較しています。
Cinema 4Dとは&できること3選(作品例あり)3DCG制作ソフトBlender・Maya・3DS MAX・Houdiniとの比較
解像度・・・映像のきめ細やかさ
同じ画面サイズなら、解像度が大きいほど画素数も多いです。
- HD :1280 px × 720 px
- 2K フルHD:1920 px × 1080 px
- 4K UHD:3840 px × 2160 px
- 8K SHV:7680 px × 4320 px
フレームレート・・・映像の滑らかさ
1秒間に何枚の静止画を表示するかの指標です。
- 防犯カメラ・監視カメラ:3~5fps(1秒間に3~5コマ表示)
- 映画:24fps(1秒間に24コマ表示)
- 日本の4K・8Kテレビ:60fps(1秒間に60コマ表示)
ビット(bit)深度・・・色・グラデーションのきめ細やかさ
ビット深度が高いほど、より多くの色を表示できます。
- 8ビット:約1677万色
- 10ビット:約10億7374万色
- 12ビット:約687億7195万色
色域・・・色彩の鮮やかさ
ディスプレイが表現できる色の範囲です。
- BT.709(Rec.709)・・・従来のフルハイビジョン放送:狭い色域
- BT.2020(Rec.2020)・・・4K/8K放送で標準化:広い色域
輝度・・・表現できる明るさ
従来のSDRよりも、近年採用が増えつつあるHDRの方がより高いコントラスト(明暗や色彩の差異)を作ります。
「HLG」 < 「HDR10」 < 「HDR10+」「Dolby Vision」
- SDR:8bit(256階調)
- HDR:10bit(1,024階調)、12bit(4,096階調)、それ以上
モニター購入時の注意
- HDMIへの対応
ほとんどのモニターは「HDMI1.4」か「HDMI2.0」にしか対応していません。 - リフレッシュレート
モニターによっては、240Hz対応とうたっていながら、HDMI接続だと144Hzしか出ない場合もあります。
実写映像も編集する場合は、24Hzで再生できるモニターを選択しましょう。
ケーブルの規格によっては、PCモニターの性能を発揮できません。「HDMI/DisplayPort/USB Type-C」などのケーブル情報は、以下の記事を参考にしてください。
PCとPCモニターとを繋ぐケーブル「HDMI」「DisplayPort(DP)」「USB Type-C」「Thunderbolt」/帯域幅/リフレッシュレート/Wi-Fi 6E/Bluetooth
おすすめPCモニター3選
クリエイター向けのPCモニターを紹介します。参考にしてください。
BenQ「PD2725U」AQCOLOR 27インチ 4K HDR デザイナーモニター
上記ツイートに映っているのは、アートディレクター/インタラクションデザイナーとして第一線で活躍する田渕将吾さん。公開されている作品の配色の面白さに魅了されます。
参考:S5-Style
Web制作で重要な「色の再現度」への絶対的な安心感を語っていらっしゃいます。記事の一部を抜粋します。
参考:完璧な色の再現性と高解像度でストレスをなくす、BenQのデザイナーモニター「PD2725U」―田渕将吾インタビュー
・「PD2725U」はsRGBが100%再現できるということで、実際に色に違和感もなく、見た目の印象でもきちんと理想の色が出ている実感もあります。
・「PD2725U」のsRGBの再現度には本当に助けられました。
・「PD2725U」の場合はコントラストが均一なので、これだけ画面が大きいにも関わらず、いつでもストレスなく端まで綺麗に見えるのもいいですね。
Dell「U3223QE」31.5インチ 4K HDR USB-C HUB モニタ-
3D Artist/GeneralistのHirokazu Yokoharaさんが、2020年に投稿されたツイートです。公開されている作品を見てわかる通り、3DCG業界の第一線で活躍されているすごい方。
ARTSTATION:https://www.artstation.com/yokohara
Instagram:https://www.instagram.com/hirokazu_yokohara/
そんな人が使用されていたPCモニター「U3219Q」の後継機が「U3223QE」。
画質、端子類の豊富さ、スタンドの優秀さ、当然ですがいずれも「U3223QE」が優れます。「U3219Q」が優れている点は内蔵スピーカーくらいですが、多くの人は別売りのPCスピーカーを使用すると思うので問題なしです。
INNOCN「27M2U」ミニLED 4K 27インチ HDR1000
ツイートの通り、PC/テクノロジーの総合情報サイトとして有名な「PC Watch」がレビュー記事を掲載しています。
参考:超激安のミニLED搭載4K対応モニター「27M2U」を購入。光の鮮やかさと舞台が暗転した瞬間の「黒」に驚く
参考:西川和久の不定期コラム ミニLEDを採用しながら6万円台で購入できるの27型4Kモニター!
記事では、コスパの高さが強調されています。実際、他社のミニLED搭載液晶モニターや液晶TVの価格を考えると、「ミニLEDを採用した27型非光沢4Kモニター」としてあり得ない安さです。記事では以下が言及されています。
・黒の締りが良くて4K(3,840×2,160ドット/60Hz)
・入力はUSB Type-C、DisplayPort、HDMI×2と必要十分。
・USB Type-Cは90Wまでの電源供給可能でノートPCなどへケーブル1本で接続でき取り回しも楽。もしUSB Type-A(Hub)があればキーボードなどをモニターへ接続してケーブルの取り回しが楽になるが、ないのが残念。
・色域はsRGB 100%、Adobe RGB/DCI-P3 99%で且つ、ΔE <2の調整済。実測でも同様の結果。
液晶パネルと有機ELパネルとの違い
クリエイター向けPCモニターは、以下の通りです。
- 低価格+高い色の再現性:液晶モニター(IPSパネル)← 迷ったらこっちでOK
- 高価格+非常に高い色の再現性:有機ELモニター ← お金に余裕のある人のみ
液晶とは、有機ELとは
- 液晶(Liquid crystal)とは:
- 液体+結晶=液晶
液晶は材料のことではなく、液体と個体(結晶)の間の物質の状態を意味します。液晶パネルでは、液晶性の分子の特徴を利用して、バックライトからカラーフィルターに入る光の強度を調整します。コスパが高く多くの一般ユーザーに普及しています。液晶パネルの中には、TN/VA/IPSの3種類があり、クリエイターはIPSのPCモニターがおすすめです。
参考:液晶とは? | 半導体の原理 | nanotec museum – 東京エレクトロン
- 有機EL(Organic Electro Luminescence)とは:
- 電圧をかけると有機物自体が発光する物理現象のことです。この現象を利用した半導体が、有機発光ダイオード(OLED)と呼ばれます。有機発光ダイオード(OLED)を使ったディスプレイが「有機ELモニター」や「有機ELテレビ」となり、バックライトが不要です。海外では「OLEDモニター」や「OLEDテレビ」と言います。主に大型のPCモニター製品が多いですが、20~40インチ製品も今後増えると予想されます。
参考:有機ELディスプレイとは?仕組みを徹底解説
有機ELパネルのデメリット:焼き付き(画面に残像が表示されたまま残ったり、黄色く変色したりする現象)
有機発光ダイオード(OLED)が長時間発光(同じ画面を長く表示)することにより、OLEDの素子そのものが劣化するため、焼き付きが発生します。
画面の輝度が高いほどOLEDの劣化は早く、白色の光が最も焼き付きを発生させます。
※メーカーの開発により、焼き付きは年々改良されています。
焼き付きを完全には避けられませんが、有機ELパネルの寿命を延ばすための自分でできる対策は以下の通りです。
焼き付きへの対策「自動スリープ」「輝度を下げる」「ダークモード」
- 画面をつけたまま放置しない(自動スリープ機能の活用)
- 画面を明るくしすぎない(輝度を下げる、明るさの自動調整機能の活用)
- 背景などに白を避ける(ダークモードの活用)
メーカー側の焼き付き対策として、有機ELにかける電圧をコントロールしている製品もありますが、表示遅延(映像を表示するまでの遅延)が発生します。原理上、遅延は1フレーム分発生するため、折角の応答速度の速さが生かしきれません。
・PC「この映像を表示してください」
↓
・モニター「はい、ですが1フレーム遅延します」
(映像を表示するための適切な電圧を計算するのに1フレームの遅延が発生)
液晶と有機ELとの比較
種類 | 液晶パネル | 有機ELパネル |
---|---|---|
価格 | 安い | 高い |
電気代(目安) | 安い 安いと言っても、有機ELパネルとの金額はさほど変わらない | 高い 1日5時間使って、液晶パネルとの金額差は月に数十円~数百円程度 |
寿命 | バックライトの寿命は約15年 他部品も考慮すると有機ELパネルとほぼ同等の寿命 | 発光素子の寿命は約10年 有機物は熱や光に弱い |
画質 | 低い 製品によりピンキリだが、基本的には有機ELパネルに劣る | 高い コントラスト比が高く、非常にきれいに見える |
光り方の仕組み | バックライトが必要 電圧をかけて液晶分子の向きを調整する | バックライトが不要 電圧をかけてRGBの独立した有機物を発光させる |
重さ 薄さ | 重たい、厚い 構造が複雑なため (バックライト、液晶、カラーフィルター、ガラス) | 軽い、薄い 構造が単純なため (有機EL、ガラス) |
得意なジャンル | 全体が明るいシーンは得意 ニュースやバラエティなどスタジオで展開される番組 | 明暗差の表現が得意 映画やドラマなど屋内外で暗めのシーンがある映像 |
主な用途 | ・競技性の高いゲームプレイ(映像美より応答速度とコスパ重視) | ・映像表現にこだわった作品の鑑賞(テレビで有機ELが増える理由) ・グラフィック重視のゲームプレイ(色鮮やかでコントラスト比の高い映像を出力) ※大型製品が多いためPCモニターよりもテレビでの導入が多い |
色表現 | ・色の再現性が低い(TA,VAは低い、IPSは高め) ・完璧な黒を表現できない=画面にメリハリが出ない (バックライトの光を液晶分子がシャットアウトして黒を表現) | ・色の再現性が高い ・完璧に近い黒(深みのある黒)を表現できる=画面にメリハリが出る (有機物の発光を止めて黒を表現) |
視野角 | TN:狭い VA:狭め IPS:広め | 広い |
応答速度 (重要度低い) | 遅い | 速い 早いほど残像感が少ないので目が疲れにくい |
画面反射 | バックライトがあり反射しづらいため、画面が見やすい(基本ノングレア) | バックライトがなく反射しやすいため、画面が見づらい(基本グレア) 日光がさす部屋、光が強い部屋では、特に反射する |
購入先 | 詳細を見る | 詳細を見る |
モニターの液晶パネル3種類「TN」「VA」「IPS」とは
よく利用される液晶パネルは、主に以下の3種類です。
- TNパネル・・・「応答速度」を重視(ゲーマーにおすすめ)
- VAパネル・・・バランス型(一般ユーザーにおすすめ)
- IPSパネル・・・「視野角」「色再現性」を重視(クリエイターにおすすめ)
視野角、色再現性、ノングレア・グレア、応答速度
3DCG制作ソフトやAdobe After Effectsなどを使用する、クリエイター向けのPCモニター選びで重要となる用語を紹介します。
- 視野角:角度をつけて画面を見たときの色の変化度合い
(視野角の「広い」モニターを選択) - 横や上から画面をみたときに、色合いが変わらず表示できるかどうかを表します。TNやVAのように視野角が狭い場合、角度をつけて画面を見ると、画面奥の色が変わって見えます。
例えば指示を出す人と作業をする人がいた場合、2人が別角度から見ていても同じ色に見えている方が好ましいです。クリエイターには、視野角の広いIPSがおすすめです。
- 色再現性:色表現の正確性
(色再現性の「高い」モニターを選択) - 色表現をどこまで正確に画面上に描写できるかを表します。再現性が高いほど、実際に目で観ている色により近い状態で映し出すことができます。TNやVAのように色再現性が低いと、画面が白っぽく見えることがあります。色を正確に表現したいクリエイターには、色再現性の高いIPSがおすすめです。
また色の再現性を高めるには、色域の広さも重要です。カバーする色が多いほど、表現できる色が増えます。Webで採用される機会の多い「sRGB」「Rec.709」のカバー率が99~100%のモニターが好ましいです。
- ノングレア(反射しない)、グレア(反射する):発色が控えめか映えるか
(「ノングレア」モニターを選択) - 液晶モニターは、表面加工処理の違いによって以下の2種類に分かれます。
ノングレア(非光沢)液晶モニター:
・画面の表面がマットで外部の光が反射しにくいため、自身の映り込みが少ない
・反射が少ないため目への負担が軽く、長時間のPC作業に有利
・忠実な色を再現する(発色が控えめ)ため、CG・映像制作者向き
グレア(光沢)液晶モニター:
・画面の表面にツヤがあり外部の光を反射しやすいため、自身が映り込むことが多い
・反射が多いため目が疲れやすく、長時間のPC作業に不利
・映える映像(発色が美しく、深い黒色を表現できるため、コントラストがはっきりする)
※ゲーマー向けPCモニター選びで重要となる用語
応答速度:モニターの画面の色が変わる速度
応答速度が速いほど映像が素早く描写されるため、映像の残像感が軽減されます。応答速度が遅いと、映像が1つ前の静止画と重なりブレて見えるため、残像感が強まります。
応答速度が速いTNパネルは、特に動きの激しいFPSやTPSなどのゲームで敵の視認性が上がるため、愛用者が多いです。
また残像感が少ない方が眼精疲労の軽減になるため、応答速度が速いと長時間ゲームをする場合に役立ちます。
「TN」「VA」「IPS」の特徴を比較
パネルの種類 | TNパネル | VAパネル | IPSパネル |
---|---|---|---|
価格 | 安い | 中間 | 高い |
視野角 (正面以外から画面を見たときの色味の変化度合い) | 狭い (画面に角度が付くと色味が変わる) | 中間 | 広い (画面に角度が付いても色味が変わりづらいため、どこから見ても映像がきれい) |
色再現性 (現実に近い色を出力できるかどうか) | 低い (画面が全体的に白っぽく見える) | 中間 | 高い (現実に近い色調の色を出力する) ※色調:色彩の濃淡強弱の調子 |
応答速度 (モニター上で色が変化するために必要な時間) | 速い | 遅い | 中間 |
特徴 | PCゲームの大会で採用されることが多い | ・コントラスト比(最も明るい部分と最も暗い部分の輝度の差)が高いため、メリハリのある映像となる ・引き締まった黒色(完全に近い黒色)を画面に出力できる | 最新式のパネルのため全体的にパフォーマンスが高く、PCの用途が広いならばIPSパネルが最良 |
主な用途 | 競技性の高いゲーミングモニターとしての利用 (応答速度重視) | コストを抑えたいクリエイター向け (映像のメリハリ重視で黒色に深みがあるため、映画鑑賞や動画鑑賞に向く) | CG・映像系クリエイター向け (正面以外から見ても色味が変わりづらく、リアルに近い色味を映すことを重視しているため、画像編集や映像編集、イラスト制作などのクリエイティブ作業におすすめ) |
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クリエイター向けPCモニター「サイズ:27~32インチ」「使用台数:3~4台」「比率:ワイド(16:9)」
クリエイト用途のPCモニターは、以下が理想的な条件です。
- サイズ:27~32インチ
- 使用台数:3~4台
- 比率:ワイド(16:9)
部屋の広さやデスクの幅など、各々の環境で最適解は異なります。自分にとっての作業しやすい環境を、少しずつ作っていけばOKです。
PCモニターの「サイズ(インチ)」「使用台数」「比率」
モニターのサイズ(インチ)
人によって作業しやすいモニターのサイズは異なりますが、3DCG制作などのクリエイターにおすすめなサイズは、27~32インチです。
24インチ:やや狭い
27~32インチ:作業しやすい
34インチ:やや広い
モニターの使用台数
モニターの理想的な使用台数も人によって異なりますが、3台~4台あると便利だと思います。人によっては、さらに別のソフトを立ち上げるためにモニターが5台必要かもしれませんし、首を動かさずに作業するためにモニター1台で十分かもしれません。
- 3DCG制作ソフト(Cinema 4D)の作業画面
- 映像制作ソフト(Adobe After Effects)の作業画面
- 学習教材の動画(YouTubeなど)を開く画面
- その他(テキストエディタ、チャットサービス、SNSなど)
モニターの比率3種類
※アスペクト比:画面や画像の横と縦との長さ(画素数)の比率
・スクエア(5:4~4:3):
あまり見かけないタイプのモニター。生産量が少ないため値段は高め。
・ワイド(16:9):
コスパが高く、広く普及するモニター。CGや映像系のソフトは「16:9」を基本としているため、原則ワイドのモニターを購入でOK。
・ウルトラワイド(21:9):
ゲーマーに人気のある超横長モニター。高画質で湾曲しているタイプもある。
インチ(型):表示領域の対角線の長さ
インチ(型)とは、表示領域の対角線の長さのことを指しています。
- 1インチ:2.54cm
- 10インチ:25.4cm(2.54cm × 10inch)
- 20インチ:50.8cm(2.54cm × 20inch)
- 30インチ:76.2cm(2.54cm × 30inch)
- 40インチ:101.6cm(2.54cm × 40inch)
- 50インチ:127.0cm(2.54cm × 50inch)
以下の表は、モニターのベゼル(額縁部分)を除いた、表示領域の大きさです。
参考:モニターの寸法(cm)
サイズ (インチ) | 対角線の長さ (cm) | ワイド画面 (16:9) 横cm × 縦cm |
---|---|---|
21インチ | 53.34 | 46.41 × 26.14 |
24インチ | 60.96 | 53.04 × 29.87 |
27インチ | 68.58 | 59.66 × 33.6 |
32インチ | 81.28 | 70.71 × 39.83 |
42インチ | 106.68 | 92.81 × 52.27 |
50インチ | 127 | 110.49 × 62.23 |
デュアルディスプレイ(マルチディスプレイ)にするべき理由
デュアルディスプレイ(2台のPCモニターを同時に利用)にすると、多くの場合で作業効率が上がります。人によっては、PCモニターを3台、4台にすることで、さらに作業効率が上がるでしょう。逆にPCモニター1台の方が作業しやすい人もいます。
YouTube:デュアルモニターの接続設定方法を専門家がわかりやすく解説!誰でも快適なデスク環境を作れますYouTube:【あなたはやってない?】デュアルディスプレイが仕事の効率を下げる話し【間違った使い方】
3DCG制作や映像制作でPCモニターを複数使用する場合の前提条件として、基本的にはグラフィックボード(GPU)がPCに搭載されている必要があります。オンボード(マザーボードに予め搭載された接続端子=デフォルト装備)の場合「HDMI」の接続口は大抵1つしかなく、また「DisplayPort」の接続口はないことが多いです。
・グラフィックボード(GPU):グラフィックボードは、画像処理に特化して計算を行うGPU(半導体チップ)を搭載しています。
グラフィックボード(GPU)とは何かを確認、クリエイター(3DCG制作)向けおすすめ紹介
・マザーボード:CPU・メモリ・ストレージ・グラフィックボード・電源ユニットなど、全ての部品はマザーボード(基盤)に接続されます。
接続規格について
「DVI」「VGA」・・・規格が古いため、画質や安定性に不安があります。
「SDI」・・・は業務用で信号が正確、かつ長距離も得意ですが、PCとモニターを繋ぐケーブルとしては使用されることは少ないです。
参考:VGAとDVI
参考:3分で簡単にわかる!VGAとDVIの違いとは?モニターケーブルの種類一覧とあわせて読書家ライターがわかりやすく解説!
参考:SDIとは – EDN Japan – ITmedia
グラフィックボードにある「HDMI」や「DisplayPort」の差し込み口の数だけPCモニターを使用できます。
3DCG制作ソフトを利用する場合、グラフィックボードは必須といってもいいので、一定のスペックである方が望ましいです。グラフィックボードなしで負荷のかかる作業をした場合、CPUの負担が大きくなります。
・CPU:マウス、キーボード、ハードディスク、メモリー、周辺機器などからデータを受け取り、CPUが制御・演算を行います。
CPUとは?PCパーツのCPU選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
・CPUクーラー:CPUを冷却するためのパーツで、CPUに高負荷をかけた際のCPUの性能低下や誤作動、故障などのリスクを抑えます。最も発熱しやすいPCパーツであるCPUは、冷却が常に課題となります。CPUの性能に見合ったCPUクーラーでなければ、十分な冷却ができません。
CPUクーラーとは?PCパーツ「空冷」「水冷」選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
デュアルモニター(デュアルディスプレイ)の設定
基本的には、以下の通りにすれば複数のPCモニターが利用できます(Windows)
デスクトップで右クリック/ディスプレイ設定/マルチディスプレイ
※それぞれのモニターの解像度や画面の向きも設定できます。
参考:デュアルモニター(デュアルディスプレイ)の設定方法や – ドスパラ
YouTube:デュアルディスプレイの接続設定方法・メリットとおすすめ
YouTube:【デュアルモニターやり方解説】せっかくパソコンを買ったならマルチモニター環境を作りましょう。
解像度:横縦それぞれのピクセル数(4Kモニターを選択)
- 解像度とは:横縦それぞれのピクセル数・・・フルHD(1920px × 1080px)
- ビットマップ画像(ピクセルの集まりで構成された画像)やPCモニターのディスプレイにおける横縦それぞれのピクセル数。
画素=ビット=ピクセル=ドット:デジタル画像を構成する色情報を持った最小単位。
解像度が高い:繊細できれいな映像 & 表示できる情報量が多い
PCの画面には、ピクセル(pixel = px)が敷き詰められています。
例えばフルHD(1920px × 1080px)なら、ピクセルが横に1920個、縦に1080個並ぶということです。1920個×1080個=2,073,600個のピクセルが画面に敷き詰められていて、1つ1つのピクセルに色がついています。
解像度が高いほど、画面に敷き詰められるピクセルの数(ピクセルの密度)が増えるため、より繊細できれいな映像が表示されます。
また4K(3840px × 2,160px)のような高解像度の画像を処理する場合、グラフィックボード(ビデオカード)への負荷は大きくなります。
YouTube:【Photoshop入門】色補正の基本 7/9 解像度とは?|-アドビ公式-
解像度が高いほど画面に表示できる情報量が変わる
解像度が高いほど画面に表示できる情報量が増えます。
例えばフルHD(1920px × 1080px)だとスクロールしないと表示されなかったWebページが、4K(3840px × 2160px)だとスクロールなしで表示されます。つまり作業領域が増えて余計なスクロールが減るため、作業効率が上がります。
注意点としては、より多くの情報が表示される分、文字は小さく表示されます。ネット上でも、4Kのモニターは文字が小さいため、125%~150%に拡大して使用しているというレビューを見かけます。
また、映像系のソフトや3DCG制作ソフトの操作画面も広く使えます。
呼び方 | 解像度 (横px × 縦px) | 画素数 :総ピクセル数 (約) |
---|---|---|
SD (Standard definition television) | 720 × 480 | 35万 |
HD (High definition video) | 1280 × 720 | 92万 |
2K フルHD (Full High definition video) | 1920 × 1080 | 210万 |
2.5K WQHD (Wide Quad High Definition) | 2560 × 1440 | 370万 |
4K UHD (Ultra High definition) | 3840 × 2160 | 830万 |
8K SHV (Super High-Vision) | 7680 × 4320 | 3,320万 |
WQHD(2560 × 1440)モニターか、4K(3840 × 2160)モニターか
近年は、作業領域、文字サイズ、価格のバランスを考え、WQHD(2560px × 1440px)モニターを使用する人が増えています。
WQHD(2560px × 1,440px)は、フルHD(1920px × 1,080px)に比べ画素数が多く綺麗に画面上へ映し出されるため、写真編集などのクリエイティブ作業にも向いてます。
とはいえ、クリエイティブな作業をPCでやる場合は、金銭的な余裕があるなら4K(3840px × 2,160px)が良いでしょう。
※4Kの「K」=1000画素。つまり4Kは約4000画素という意味。
YouTube:WQHDと4Kどちらを買うべきか?メリットデメリットと選び方を教えます
WQHDモニターの特徴
- 画素数・・・2560px × 1440px
- 価格・・・4Kより安い
- 作業領域・・・フルHDより広い
画素密度(ppi):ピクセルの密度
液晶ディスプレイやビットマップ画像はピクセルの集まりでできています。
画素密度は、モニター(ディスプレイ)における1インチ(2.54cm)あたりのピクセル(画素)数を示した数値です。
つまり、1インチの1辺(縦もしくは横の長さ)にいくつのピクセルが並んでいるかということです。
ppi(dpi):画素密度の数値が大きいほど1インチあたりに多くのピクセルが並ぶ
一般に、Web業界ではデータとなるためppi(pixel per inch)、印刷業界ではインクを使用するためdpi(dot per inch)という単位で表されます。ppiとdpiは、同じ意味です。
同じ画面サイズでも、画素密度の数値が大きいほど1インチあたりに多くのピクセルが並ぶことを意味し、きめ細やかで鮮明な映像が画面に出力されます。
- 72ppi:1インチあたりピクセルが72個
- 150ppi:1インチあたりピクセルが150個
- 300ppi:1インチあたりピクセルが300個
例1
横縦それぞれ10インチ(20.54cm)の画像があり、1インチ(2.54cm)の中に横縦それぞれ3ピクセル並んでいた場合
解像度:横:30px(10inch × 3px) × 縦:30px(10inch × 3px)
画素数(その画像におけるピクセルの総数):90px(横:30px × 縦:30px)
画素密度(1インチの1辺のピクセル数):3ppi
例2
・2-1:横1000px、縦1000pxの画素数は?
→1000px × 1000px = 100万画素
・2-2:100万画素の画像データを100dpi(1インチの1辺に100ピクセル並ぶ)でプリントするときのサイズは?
1000px ÷ 100dpi = 10inch
→横:10inch × 縦:10inch の大きさでプリントされる
・2-2’:100万画素の画像データを1000dpi(1インチの1辺に1000ピクセル並ぶ)でプリントするときのサイズは?
1000px ÷ 1000dpi = 1inch
→横:1inch × 縦:1inch の大きさでプリントされる
2-2と2-2’の画素数(ピクセルの総数)は同じです。画素密度(ピクセルの密度)を変更したことでサイズに影響があっただけで、2-2と2-2’の画像データそのものは変わりません。画像のピクセル数が増えたり減ったりした場合のみ、画像データ自体に影響が及びます。
ppi(dpi)値が高いほど画素密度は高くなるため表現が細かくなり(画像サイズも小さくなり)、画質は向上して見えます。
- インクジェットプリンターで印刷する際:一般的に300~350dpiが多い
- スマホやPC表示などWeb用に出力する際:一般的に72ppiが多い
ディスプレイサイズ(インチ)ごとのppi
使用するデバイスによって、ピクセルのサイズは異なる
同じ画像(同じピクセル数の画像)を違う解像度のモニターで表示した場合、以下のようになります。
・高解像度(4K:3840 × 2160)のモニター:小さく表示
・低解像度(HD:1280 × 720)のモニター:大きく表示
ディスプレイサイズ(インチ)ごとのppi(1インチ(=2.54cm)の中にどれだけの数の画素(ピクセル)があるか)は、以下の表の通りです。
参考:ディスプレイの画素密度(ppi)一覧表、4K、8K、FHD
解像度 (横px × 縦px) | 21インチ のppi | 24インチ のppi | 27インチ のppi | 32インチ のppi |
---|---|---|---|---|
HD (High definition video) 1280 × 720 | 70 | 61 | 54 | 46 |
2K フルHD (Full High definition video) 1920 × 1080 | 105 | 92 | 82 | 69 |
4K UHD (Ultra High definition) 3840 × 2160 | 210 | 184 | 163 | 138 |
8K SHV (Super High-Vision) 7680 × 4320 | 420 | 367 | 326 | 275 |
- Webに表示される画像のppi
- ppiを変えても画像のピクセル数が変わらないため、Webに表示される画像の画質は変わりません。
Retina(Apple製品に搭載されている高精細ディスプレイ)に対応させたい場合は、ppiを調整するのではなくピクセル数を2〜3倍にしましょう。
フレームレート(fps)とリフレッシュレート(Hz)の違い、関係性
モニターに映る映像は、いわば高速のパラパラ漫画です。静止画を非常に素早く切り替えることで、見る側が動画として認識します。
1秒間の更新回数:PC側の処理「fps」/モニター側の処理「Hz」
- フレームレートとは:PC側の処理「fps」
- 1秒間に動画を更新する回数(PC側の処理)のことです。つまり、1秒間に何枚の画像で構成された映像かを意味します。CPUやグラフィックボードなどの性能によって決まります。パラパラ漫画のイメージに近く、1秒間に30枚より60枚の方が動きは滑らかになります。「fps」で表します。
24fps・・・1秒間が24コマの映像として出力
30fps・・・1秒間に30コマの映像として出力
60fps・・・1秒間に60コマの映像として出力
144fps・・・1秒間に144コマの映像として出力
240fps・・・1秒間に240コマの映像として出力
- リフレッシュレートとは:モニター側の処理「Hz」
- PCで処理された映像(fps)はケーブルを通してモニターに送られます。その映像を1秒間に更新する回数(モニター側の処理)のことです。「Hz」で表します。144Hz/1ms以上は、人間の目でほとんど違いが分かりません。
24Hz・・・1秒間に24回、画面を更新
30Hz・・・1秒間に30回、画面を更新
60Hz・・・1秒間に60回、画面を更新
144Hz・・・1秒間に144回、画面を更新
240Hz・・・1秒間に240回、画面を更新
クリエイター「色表現の豊かさ」/ゲーマー「リフレッシュレート」
用途によって、モニターに求められる性能は異なります。
- CG制作・映像編集・作品鑑賞:
リフレッシュレートよりも、集中して作品を鑑賞するため色表現の豊かさが重視される - ゲーム(FPS、TPS):
色表現の豊かさよりも、一瞬の判断が求められるためリフレッシュレートが重視される
金銭的に余裕があるならば、PC、ケーブル、モニター全てを最新スペックにしておけば問題ありません。ですがオーバースペックの製品をそろえてもお金の無駄遣いにしかならないため、自身の用途に合ったスペックの製品を購入しましょう。
CG制作や実写で60fps以上の映像を作らないならば、または60fps以上が求められるPCゲームをしないならば、144Hz、240hzのPCモニターは不要です。
また、現在使用しているPCモニターのリフレッシュレートを確認することをお勧めします。使用中のPCモニターよりも高いリフレッシュレートが必要なのかどうか、目安となります。
使用モニターのリフレッシュレートの設定・確認(Windows)
左下のスタートボタン(キーボードのWin)
/設定
/システム
/ディスプレイ
/ディスプレイの詳細設定
/※リフレッシュレートを変更したいモニターを選択
/ディスプレイ1のアダプターのプロパティを表示します
/モニタータブに切り替え
/モニターの設定・画面のリフレッシュレート
メディアによって、fps(Hz)は異なります。実写映像を映画っぽく編集する場合は、24Hzで再生できるモニターがあると良いでしょう。
- 実写映画:24fps(1秒間に24回更新)
- テレビ:約30fps(1秒間に約30回更新)
- YouTube:60fps(1秒間にマックスで60回更新)
- Cinema 4D:基本設定は30fps(1秒間に30回更新)
制作中に使用したデータは、ストレージへ安全に保存しておきましょう。
・ストレージ(HDD・SSD):画像や動画、テキスト、音声など様々なファイル(データ)を保存しておく場所、機器(記憶装置)です。ストレージの種類には、PC内臓・外付け・オンラインがあります。複数の手段でバックアップしておくと良いでしょう。
SSD・HDDとは?PCパーツのストレージ選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
フレームレート(fps)とリフレッシュレート(Hz)との関係について:映像素材のfps、PCのfps、ケーブルのHz、モニターのHz
PCとモニターをケーブルで繋いで映像を見る場合、以下の流れを辿ります。
- そもそも再生したい映像素材
カメラで撮影する際のフレームレートで、映像の滑らかさが異なります。 - PCで映像編集、再生処理
CPU・GPUを筆頭としたPCパーツの性能、処理するデータの量、PCゲームの設定などに依存します。 - HDMIケーブルやDisplayPortケーブルなどで映像と音声を送る
ケーブルの規格によって、対応するリフレッシュレートが異なります。 - モニターで再生
クリエイター向けのモニターか、ゲーマー向けのモニターかによって、特化する性能が異なります。
つまり、4要素のスペックに考慮して、更新回数(fps,Hz)のボトルネックを作らないことが滑らかな画面を映し出すことには欠かせません。上流から下流に水が流れる際、どこかで水路が狭くなると結果として出てくる水は少なくなるのと同じです。
各過程で最も低いfpsやHzの値が、1秒間のディスプレイ更新回数となります。
PCモニターの性能を最大限引き出すには、各パーツの理解も必要です。
・各PCパーツの簡単な説明:パソコンを構成する各PCパーツ(CPU・CPUクーラー/メモリ(RAM)/グラフィックボード(GPU)/ストレージ(HDD・SSD)/電源ユニット(PSU)/PCケースなど)の簡単な説明は、以下の記事にまとめています。
以下の例では、分かりやすく240fps(Hz)と60fpx(Hz)とを使用しています。60fps(Hz)の映像は、実際に見てみると滑らかな印象を持つ人が多いでしょう。
また滑らかで残像の少ない映像が必ずしも良いというわけでもありません。
例1:モニターのHzが低い
・映像素材のfps・・・240fps
・PCのfps・・・240fps
・ケーブルのHz・・・240Hz
・モニターのHz・・・60Hz
↓
結果的に1秒間に60回、画面は更新される(60Hz)
例2:PCのfpsが低い
・映像素材のfps・・・240fps
・PCのfps・・・60fps
・ケーブルのHz・・・240Hz
・モニターのHz・・・240Hz
↓
結果的に1秒間に60回、画面は更新される(60Hz)
例3:ケーブルのHzが低い
・映像素材のfps・・・240fps
・PCのfps・・・240fps
・ケーブルのHz・・・60Hz
・モニターのHz・・・240Hz
↓
結果的に1秒間に60回、画面は更新される(60Hz)
例4:映像素材のfpsが低い
・映像素材のfps・・・60fps
・PCのfps・・・240fps
・ケーブルのHz・・・240Hz
・モニターのHz・・・240Hz
↓
結果的に1秒間に60回、画面は更新される(60Hz)
例5:全てのfps,Hzがそろう
・映像素材のfps・・・240fps
・PCのfps・・・240fps
・ケーブルのHz・・・240Hz
・モニターのHz・・・240Hz
↓
結果的に1秒間に240回、画面は更新される(240Hz)
色深度(bit深度):モニターが表示可能な色数(「10bit」モニターを選択)
色深度は、以下の2種類を表すことがあります。
参考:モニターの色深度:どのような違いがありますか
- RGBそれぞれ各色の階調数
RGB:「光の三原色」レッド・グリーン・ブルーの3色を混ぜると白になる
階調:色の濃淡を表すグラデーション=色の段階 - 全体の色数(フルカラーの理論値)
階調数をRGB分の3回かける
bit深度(1ピクセルあたりのデータ量)/単位「bpp(bits per pixel)」
色深度はbit深度とも呼びます。bit深度は、1ピクセルあたりのデータ量のことです。単位は「bpp(bits per pixel)」です。
デジタルの世界(「0」と「1」との2進数)では、色や階調(色の濃淡を表すグラデーション=色の段階)を表す際の単位は「bit」となります。
RGBカラー画像における「RGB全体のbit(bpp)」と「階調」は、以下の通りです。
参考:デジタル写真の bit(ビット)を探る
参考:第六回 色とデータサイズ (デジタル画像の色、データサイズについて)
チャンネル | R(Red) / G(Green) / B(Blue) | RGB画像 |
bit(8bit) | 8bit + 8bit + 8bit | 24bpp (1pxに24bit使用) 「24bitフルカラー画像」 |
階調(8bit) | 256 × 256 × 256 | 約1,678万色 (16,777,216色) |
bit(10bit) | 10bit + 10bit + 10bit | 30bpp (1pxに30bit使用) 「30bitフルカラー画像」 |
階調(10bit) | 1,024 × 1,024 × 1,024 | 約10億7,374万色 (1,073,741,824色) |
「8bit」「10bit」の階調数・全体の色数(フルカラーの理論値)
色深度が深くなる(bitの数値が上がる)につれて、R(レッド)G(グリーン)B(ブルー)それぞれの色数は増えていきます。表現できる色が増えると、色彩が豊かな画面となります。
参考:モニターの色深度:どのような違いがありますか
- 8bitの場合・・・2の8乗
- ・RGBそれぞれ各色の階調数:256階調(256通りの色パターンの情報量)
・全体の色数(フルカラーの理論値):約1,678万色
R:256 × G:256 × B:256=約1,678万色
- 10bitの場合・・・2の10乗
- ・RGBそれぞれ各色の階調数:1,024階調(1,024通りの色パターンの情報量)
・全体の色数(フルカラーの理論値):約10億7,374万色
R:1,024 × G:1,024 × B:1,024=約10億7,374万色
写真や映像撮影のためのカメラ(スマホを含む)は10bitが主流になってきているため、グラフィックボード(GPU)やモニターも10bit表示が望ましいです。逆にモニターが10bitで表示できるならば、グラフィックボード(GPU)も10bit対応、カメラで撮影する素材も10bitでなければ意味がありません。
ソフトウェアで画像や動画を表示する場合も、起動しているソフトウェアが10bitに対応している必要があります。
・グラフィックボード(GPU):グラフィックボードは、画像処理に特化して計算を行うGPU(半導体チップ)を搭載しています。
グラフィックボード(GPU)とは何かを確認、クリエイター(3DCG制作)向けおすすめ紹介
・グラフィックボード(GPU)の設定:グラフィックボードの設定を見直してみましょう。
-色深度(RGBそれぞれが表示できる色数)を10bitに設定
-ドライバーの更新(不具合の修正・アップデート)
8bitの写真や映像でも多くの人はきれいだと認識しますが、8bitと10bitでは色表現の幅が圧倒的に異なります。色深度が深くなる(bitの数値が上がる)につれて、階調は増えていき色の表現が豊かになります。特に空や海などの少しずつ色が変わっていくグラデーションは、bit値が高いほど有利です。
今後、10bitの情報を持つ拡張子(HEIF:High Efficiency Image File Format などの画像データ形式)が普及したり、10bitの作品、10bit表示できるディスプレイが一般に広がれば、10bitの価値はさらに高まります。
※bit値により色域(ディスプレイで表示できる色の範囲の規格)が変わるわけではありません。
bit値 | RGB各色 の階調数 | 全体の色数 (フルカラーの理論値) |
---|---|---|
8bit | 256 | 約1,678万色 |
10bit | 1,024 | 約10億7,374万色 |
12bit | 4,096 | 約687億7195万色 |
14bit | 16,384 | 約4兆3980億4651万色 |
16bit | 65,536 | 約281兆4749億7671万色 |
bit値が大きくなるほど、データ容量は大きくなる
bit値が大きくなるほどデータ容量は大きくなります。RGBカラー画像におけるファイルサイズ(データ容量)の計算(非圧縮)方法は、以下を参考にしてください。
参考:ビットとバイトの違いや変換計算式。簡単な覚え方や他の単位も紹介!
参考:画像と動画のデータ量(例題と確認問題)
参考:画像のデータ量計算問題【情報Ⅰ】
「8bit/フルHD」のデータ量計算:約6.2MB
- bit深度:8bit
- bpp(1ピクセルあたりのデータ量):24bpp(8bit + 8bit + 8bit)
- 画像サイズ:フルHD(1920 px × 1080 px)
- 全体のピクセル数:1920 px × 1080 px = 2,073,600 px
- データ容量(bit,b/ビット):2,073,600 px × 24(bpp) = 49,766,400 b
- データ容量(Byte,B/バイト):49,766,400 b ÷ 8 = 6,220,800 B
※1Byte(バイト) = 8bit(ビット) - データ容量(kilobyte,KB/キロバイト):6,220,800 B ÷ 1,000 = 6,220.8 KB
※1KB(キロバイト)= 1,000B(バイト) - データ容量(megabyte,MB/メガバイト):6,220.8 KB ÷ 1,000 = 6.2208 MB
※1MB(メガバイト)= 1,000KB(バイト)
「10bit/フルHD」のデータ量計算:約7.8MB
- bit深度:10bit
- bpp(1ピクセルあたりのデータ量):30bpp(10bit + 10bit + 10bit)
- 画像サイズ:フルHD(1920 px × 1080 px)
- 全体のピクセル数:1920 px × 1080 px = 2,073,600 px
- データ容量(bit,b/ビット):2,073,600 px × 30(bpp) = 62,208,000 b
- データ容量(Byte,B/バイト):62,208,000 b ÷ 8 = 7,776,000 B
※1Byte(バイト) = 8bit(ビット) - データ容量(kilobyte,KB/キロバイト):7,776,000 B ÷ 1,000 = 7,776 KB
※1KB(キロバイト)= 1,000B(バイト) - データ容量(megabyte,MB/メガバイト):7,776 KB ÷ 1,000 = 7.776 MB
※1MB(メガバイト)= 1,000KB(バイト)
素材(画像、映像)、グラフィックボード(GPU)、ディスプレイ、それぞれの「bit値」に配慮
以下の「bit値」がそれぞれ同じであることが望ましいです。
- 素材(画像、映像)
- グラボ(GPU)
- ディスプレイ
例1:素材(画像、映像)のbit値が低い
・素材(画像、映像)・・・8bit
・グラボ(GPU)・・・10bit
・ディスプレイ・・・10bit
↓
PCモニター(ディスプレイ)で見る作品は「8bit」です。
例2:グラボ(GPU)のbit値が低い
・素材(画像、映像)・・・10bit
・グラボ(GPU)・・・8bit
・ディスプレイ・・・10bit
↓
PCモニター(ディスプレイ)で見る作品は「8bit」です。
例3:ディスプレイのbit値が低い
・素材(画像、映像)・・・10bit
・グラボ(GPU)・・・10bit
・ディスプレイ・・・8bit
↓
PCモニター(ディスプレイ)で見る作品は「8bit」です。
例4:全てのbit値がそろう
・素材(画像、映像)・・・10bit
・グラボ(GPU)・・・10bit
・ディスプレイ・・・10bit
↓
PCモニター(ディスプレイ)で見る作品は「10bit」です。
またグラフィックボードとPCモニターとを繋ぐケーブルは、10bit対応であるか確認してください。
・グラフィックボード(GPU):グラフィックボードは、画像処理に特化して計算を行うGPU(半導体チップ)を搭載しています。CG制作・映像編集などを行うクリエイター向けパソコンには、必ず搭載されています。CPUに内蔵されたGPUより高性能で、処理が高速です。
グラフィックボード(GPU)とは何かを確認、クリエイター(3DCG制作)向けおすすめ紹介
・グラフィックボード(GPU)の設定:グラフィックボードの設定を見直してみましょう。
-色深度(RGBそれぞれが表示できる色数)を10bitに設定
-ドライバーの更新(不具合の修正・アップデート)
グラフィックボードを買ったらやるべきこと(クリエイター向け)「色深度:10bit」「ドライバー更新」
・ケーブル(HDMI/DP/USB):ポート(端子)の性能に合うケーブル規格を選びます。ケーブルの規格によっては、グラフィックボード(GPU)やPCモニターなど各機器の性能を発揮できません。
ケーブル選びに重要な「帯域幅」「リフレッシュレート」も解説しています。
PCとPCモニターとを繋ぐケーブル「HDMI」「DisplayPort(DP)」「USB Type-C」「Thunderbolt」/帯域幅/リフレッシュレート/Wi-Fi 6E/Bluetooth
色域:人が見える「色」と「色の鮮やかさ」の範囲を一定に規定したもの(「Rec.709」「sRGB」それぞれカバー率100%のモニターを選択)
色域とは、人が知覚できる色の範囲(CIE1931色空間:可視領域を定量的に定義した色空間)の中で、さらに特定の色の範囲を定めたものです。デジタルカメラやスキャナ、ディスプレイ、プリンタなど、それぞれ再現できる色の範囲は異なります。
色域が定められていない場合、使用する機器間で色空間(カラースペース)をカバーする割合は異なるため、各機器で想定していない色が表現されます。どの機器でも同じ色が表現される方が都合がよいため、機器間での色の統一を図ろうと、色域が決められています。とはいえ、異なるメーカーの機器を同じ色域の規格で表示しても、色を完全に一致させることは難しいです。
参考:第1回 大事なのは”正しい色”を表示できること――液晶ディスプレイの「色域」を理解しよう
参考:Adobe RGBとsRGB、用途に合った色域のモニター選び
映像系クリエイターは「Rec.709」と「sRGB」とのカバー率100%で基本的にはOK
色域には様々な種類があります。各色域は、CIE1931色空間をどれだけカバーしているかという点で異なります。
また色空間のカバー範囲(表現できる色の多さ)も重要ですが、色域の普及率も考慮するべきです。多くの機器で採用された色域を選ぶ方が無難です。
また、使用するCG制作ソフトウェアとPCモニターとで、色域をそろえるのがベストです。
以下は、「rec.2020/PQ」でそろえた例です。
- CG制作ソフトウェア「rec.2020/PQ」
参考:OCIOカラーマネジメント
参考:Cinema 4D 2023新機能: ワークフローの改善|Maxon – note - PCモニター「rec.2020/PQ」
活動分野によって、選ぶ色域(購入するべきモニター)が変わる
色域選びで重要なポイントは、自分が作った映像がどの環境で閲覧されるかという点です。Web(YouTube)なのか、映画なのか、Netflixなのか、それぞれに最適な色域の規格があります。自身の活動分野で一般的に採用される色域をカバーしたモニターを購入してください。
映像系クリエイターは、以下2つ以上に対応したモニターがおすすめです。それぞれカバー率が99%~100%のモニターが好ましいでしょう。
- Rec.709:CM、TV、YouTubeで採用
- sRGB:Webで広く採用
※「Rec.709」と「sRGB」とは同じ色域ですが、ガンマ値(入出力される信号や電圧と実際の画素の輝度などとの関係を表したもの)が異なるため再現できる色が異なります。
※「AdobeRGB」カバー率が99%以上ならば、「sRGB」や「Rec.709」は100%カバーされると考えてよいでしょう。
参考:第7回 “曲線美”が色再現性の決め手になる?――液晶ディスプレイの「ガンマ」を知ろう
色域の規格 | 制定者 | 色空間の カバー範囲 (便宜上の目安) | 普及・採用している業界 |
---|---|---|---|
CIE1931色空間 | CIE (国際照明委員会) | 100% | - |
Rec.2020 | ITU (国際電気通信連合) | 70% | スーパーハイビジョン(8K)放送のSDR映像 |
Adobe RGB | Adobe | 60% | Webや紙面で一部普及(採用製品が限られる) |
NTSC | NTSC National Television System Committee (全米テレビジョンシステム委員会) | 60% | TVで普及 |
DCI-P3 | DCI Digital Cinema Initiatives (アメリカの映画制作業界団体) | 55% | 映画(デジタルシネマ)で普及 |
Display P3 | Apple | 55% | 主にAppleデバイスで普及 |
Rec.709 | ITU-R ITU Radiocommunication Sector (国際電気通信連合 無線通信部門) | 50% | CM、TV、YouTubeで採用 |
sRGB | IEC (国際電気標準会議) | 50% | Webで広く普及(国際的な標準仕様) |
カバー率:ディスプレイが色域をどのくらいカバーしているか
カバー率とは、ディスプレイが色域をどのくらいカバーしているかを示します。
仮に「Adobe RGB」カバー率99%であれば、「Adobe RGB」の色域の範囲内にある99%の色をディスプレイが表現できます。
参考までに、以下のカバー率はおおむね同等の色域の広さです。
例1
・Adobe RGB・・・90%
=NTSC・・・88%
=sRGB・・・120%
例2
・sRGB・・・100%
=DCI-P3・・・75%
=NTSC・・・72%
=AdobeRGB・・・72%
・カラーマネジメントPCモニター:プロのクリエイターが使う、正確な色調整・色再現ができるPCモニターです。キャリブレーションによって、ディスプレイの「経年劣化」と「色の個体差」をカバーします。
目的に合わせて、液晶ディスプレイの色域を切り替える
各機器で採用する色域が異なると、カバーしていない色は置き換えて表現されます。
例)イラスト制作者のPCモニターで表現された色が、イラスト鑑賞者のPCモニターでは完全には表現されない可能性があります。
- イラスト制作者:
Adobe RGB(色空間のカバーが広い=表現できる色が多い) - イラスト鑑賞者:
sRGB(色空間のカバーが狭い=表現できる色が少ない)
一般消費者の多くが使用しているディスプレイは、現状では「Adobe RGB」非対応かつ「sRGB」対応の製品が多いです。色域の考慮されていないディスプレイに対応することは難しいため、基本的には色域に対応したモニター使用者向けに作業すればOKです。
色域を切り替えるボタン(調整メニュー)
一定価格以上のモニターには、表面や裏面、側面のどこかに色域を切り替えるボタン(調整メニュー)があります。ボタンを押すと「sRGB」→「Rec.709」→「DCI-P3」などというように色域が切り替わります。
例えば「sRGB」モードを選択すると、画面に表示される色が「sRGB」の色域に収まるようになります。
詳しくは各モニターの仕様を確認しましょう。
納品前の色チェックは必須です。目的の色域に合わせて、液晶ディスプレイの色域をコントロールしましょう。つまり、色域を切り替えられるモニターを選ぶ必要があります。
※CMYKはRGBほど色表現が豊かではありません。
・Web:RGB(色を光で表現)
・印刷:CMYK(色をインクで表現)
SDRとHDR「輝度の情報量が多い(データが重たい)=コントラストが高い」
SDRとHDRとで、輝度(明暗)の表現力「コントラスト(明暗や色彩の差異)」が異なります。
参考:よくわかる、HDR徹底解説! HDRとは | EIZO株式会社
- SDR:輝度の情報量が少ない(データが軽い)=コントラストが低い
- HDR:輝度の情報量が多い(データが重たい)=コントラストが高い
- SDR(Standard Dynamic Range):スタンダードダイナミックレンジ
- 現状では、目にする多くの画像や動画がSDRです。SDRでも、多くの人は必要十分にきれいな画像・映像だと認識します。とはいえHDRと比べて明暗の表現力が乏しいため、「白とび」や「黒つぶれ」を引き起こすことがあります。
・白とび・・・明るい部分の階調が失われ白一色になっている状態
・黒つぶれ・・・暗い部分の階調が失われ黒一色になっている状態
- HDR(High Dynamic Range):ハイダイナミックレンジ
- SDRに比べて、より広い明るさの幅(ダイナミックレンジ)を表現できる表示技術です。つまり、シャドウ(最も暗い部分)に深みを持たせ、ハイライト(最も明るい部分)の輝度をあげることで、より高いコントラスト(明暗や色彩の差異)を作ります。
理論値で輝度がSDRの100倍も高く、映像の細かい色彩や明暗を表現できるため、臨場感が増します。ダイナミックレンジが広いほど奥行きのある描写となり、人間の目で見たときの印象に近いリアリティを出すことができます。
※SDRよりも情報量が多いものは、すべて広義のHDRです。
ダイナミックレンジとは(輝度に関わる指標)
ダイナミックレンジ:光信号の最大値と最小値との比率=明暗における階調の幅
※デジタル撮影とは、光エネルギーを半導体で電気エネルギーに変換して記録する作業(光を画像データにすること)です。
YouTube:[セミナー] HDRセミナー 入門編
参考:「HDR時代」到来 テレビからiPhoneまで – EIZO
自然界のダイナミックレンジの一例
「屋外・快晴」と「闇夜」との照度(ルクス:lx)の比率を計算
・屋外・快晴・・・ 100,000 lx
・闇夜・・・0.007 lx
100,000lx ÷ 0.007lx = 1,400万
→「屋外・快晴」は「闇夜」の1,400万倍明るい(自然界のダイナミックレンジ)と言えます。
あくまで例えですが、1,400万段階の明るさをデータ化できれば、自然界のダイナミックレンジが再現できそうです。
実際のところ、人間が感じられるダイナミックレンジは自然界の3割ほど(瞳孔の調整によりさらに拡大する)のようです。3割しか感じられない我々の目でも、SDRの表現力は人間の目から見える描写力に届きません。ですがHDRによって、よりリアリティのある描写となります。
- 人間の目が知覚できる明るさの範囲(ダイナミックレンジ):10の12乗
- HDR:10の5乗(SDRの100倍の明るさを表現できる)
- SDR:10の3乗
SDRとHDRとの違い
- 人間の性質上、一定以上の明るさは区別できません。
- 例)以下2つの状況下で増えるエネルギーは同じですが、感覚は異なります。
・夜の屋外で、懐中電灯をつけたときに感じる明るさの変化は、大きい
・昼の屋外で、懐中電灯をつけたときに感じる明るさの変化は、小さい
※ヴェーバー・フェヒナーの法則「人間の感覚量は、受ける刺激の強さの対数に比例する」
人の明るさの感じ方(一定以上の白や黒は、情報を切り捨てて問題ないだろう)や技術的な点(データを軽くしたい)から、SDR画像(8bit:256階調)が定義され現在に至るまで長く使用されてきました。
ところが近年においては、ハードウェア(カメラやモニター)の進化により映像分野でHDR(10bit:1,024階調 or 12bit:4,096階調)の導入が加速してきています。クリエイターからすると、SDRで切り捨てられた情報を拾って作品に落とし込めるのは魅力的です。
HDRの作品を制作・閲覧する条件
- HDR対応の素材(カメラでHDR撮影)
- HDR対応のCG制作ソフトウェア(Cinema 4Dは、HDRモニターに対応済)
参考:Cinema 4D R25新機能: 新しくなったインターフェイス/HDRモニターへの対応 - HDR対応のコンテンツ(画像、映像作品、ゲーム)
- HDR対応のPC(CPU、グラボ=GPU)、デバイス(PlayStation,Xboxなど)
- HDR対応のディスプレイ(PCモニター、TV)
参考:HDR ゲーム用モニターを選ぶときのポイント – インテル
ダイナミックレンジ | SDR | HDR |
---|---|---|
明暗差の最大値 | 8bit(256階調) | 10bit(1,024階調) または 12bit(4,096階調) ※14bit以上もHDR |
輝度情報のレンジ | 0.05 ~ 100 cd/m2 | 0.0005 ~ 10,000 cd/m2 ※HDR対応ディスプレイの多くは、1000 cd/m2までしか表現できない |
データサイズ | 小さい | 大きい ※動画の負担は静止画よりも大きい |
規格 | sRGB bt.709 bt.1886 bt.2020 SMPTE ST428-1 など | ITU-R Recommendation BT.2100 (通称 Rec.2100) ※HDR放送の世界標準規格 |
輝度(ダイナミックレンジ)がHDRの国際規格「BT.2100」
「BT.709」「BT.2020」と新しい規格が生まれる中で、2016年7月に輝度(ダイナミックレンジ)がHDRの規格「BT.2100」が制定されました。いつしか「BT.2100」を前提とした制作、鑑賞が当たり前となるかもしれません。
※「BT.2100」=「ITU-R BT.2100(通称 Rec.2100)
HDR国際規格 | BT.709 | BT.2020 | BT.2100 |
---|---|---|---|
解像度 | フルHD | 4K、8K | HD、4K、8K |
ビット深度 | 8bit | 10bit or 12bit | 10bit or 12bit |
フレームレート | 最大60fps | 最大120fps | 最大120fps |
色域 | rec.709 | rec.2020 | rec.2020 |
輝度 (ダイナミックレンジ) | SDR | SDR | HDR |
「ITU-R BT.2100(通称 Rec.2100)」では、制作用の規格として用途に合わせた2つのガンマカーブ「HLG」「PQ」が制定されています。どちらもSDRを超える明るさの範囲を持ちますが、それぞれ思想が異なります。
ガンマカーブ:どれくらいの信号が入力されたら、どれくらいの明るさを出力するか、つまり色と階調を左右します。
参考:よくわかる、HDR徹底解説! ガンマカーブの違い – EIZO
- BT.:解像度、色域、輝度を含めた規格
- rec.:色域のみの規格
ガンマカーブ | HLG (Hybrid Log Gamma) | PQ (Perceptual Quantization) |
---|---|---|
提案団体 | Dolby(米) | BBC(英)/NHK(日) |
用途 | テレビ放送、ライブ中継向け | Web配信、映画向け |
特性 | SDRテレビと互換性のあるガンマカーブ 表示機器側の最大輝度に依存してガンマカーブが変化する 従来のSDRテレビに表示した場合でも大きく画崩れせずに、HDR映像を再生できる | 人間の視覚特性に基づく新たなガンマカーブ 表示デバイスで再現できる輝度までは常に同じガンマカーブを描く 表示デバイスの最大輝度までの階調領域は、制作者の表現を正確に再現する |
表示デバイスごとの輝度 | 相対値で扱うため、表示デバイスによって変動 | 絶対値で扱うため、表示デバイスによらず一定 |
ピーク輝度 (最大輝度) | 1,000 cd/m2 ※表示機器の最大輝度と一致 | 10,000 cd/m2 ※現状、10,000 cd/m2を表示できるディスプレイはほぼ無い(400~1,000 cd/m2の製品が多い) ディスプレイの対応を超えた輝度情報は、ディスプレイで調整されて表示される |
黒レベル | 0.005 cd/m2以下 | 0.005 cd/m2以下 |
HDRの規格「HLG」「HDR10」「HDR10+」「Dolby Vision」
HDRには主に4つの規格があり、性能的には以下のようになります。
低い 「HLG」 < 「HDR10」 < 「HDR10+」「Dolby Vision」 高い
「HDR10+」と「Dolby Vision」は、機能的に実質ほとんど同じと考えてOKです。「HDR10+」や「Dolby Vision」対応のディスプレイを購入すれば、現状HDRで困ることはありません。
HDRの信号方式 | HLG | HDR10 | HDR10+ | Dolby Vision |
---|---|---|---|---|
ガンマカーブ | HLGカーブ | PQカーブ | PQカーブ | PQカーブ |
特性 | 日本の4k/HDRテレビ放送で採用される規格 | 事実上のHDR業界標準規格 | HDR10が拡張され、性能的に進化した規格 | Dolby社が提唱した規格 |
ビット深度 | 10ビット | 10ビット | 10ビット以上 | 12ビット |
メタデータ (最大輝度の設定) | 作品全体を通して輝度を設定 (シーンによっては、クリエイターの意図と異なる明るさで表現されるかもしれない) | 作品全体を通して輝度を設定 (シーンによっては、クリエイターの意図と異なる明るさで表現されるかもしれない) | 作品中のシーンごとに輝度を設定 (シーンごとに、クリエイターの意図通りの明るさで表現される) | 作品中のシーンごとに輝度を設定 (シーンごとに、クリエイターの意図通りの明るさで表現される) |
「Display HDR(液晶)」「Display HDR True Black(有機EL)」
PCモニターのスペックを確認する際、HDRに注目すると「HDR 400」「HDR 600」「HDR 1000」という文言を見かけます。それら「Display HDR」は、VESA(米)が策定したオープンなHDR認証規格です。画面の明るさや、明暗部のコントラスト、黒から白への輝度応答時間などを規定しています。
- Display HDR:
液晶パネル向け(「1000 cd/m2」以上の輝度を実現できる) - 暗いシーンよりも、輝度の高い明るいシーンで有利です。
・「HDR 400」の認証を取得したモニター:SDRとあまり大差がない
・「HDR 600」以上の認証を取得したモニター:HDRの恩恵を感じる
・「HDR 1400」の認証を取得したモニター:HDRコンテンツを制作するプロクリエイター向け
- Display HDR True Black:
OLEDパネル向け(有機ELは熱に弱いため、輝度に限界がある) - ピーク輝度が原理上低くなるため画面全体が明るくなるシーンは厳しく、暗いシーンで有利です。
・Display HDR True Black 400:最小となるピーク輝度が「400 cd/m2」
・Display HDR True Black 500:最小となるピーク輝度が「500 cd/m2」
・Display HDR True Black 600:最小となるピーク輝度が「600 cd/m2」
以下の表を見てわかるように、グレードの高い規格ほど以下の傾向があります。
- 「ピーク輝度」と「黒レベル」との比率(ダイナミックレンジ)が上がり、高いコントラストを実現
- 「色域」が広がり、より多くの色彩表現ができる
VESA(米)の HDR認証規格 | 最小ピーク輝度 (cd/m2 の明るさ) | 最大黒レベル輝度 (cd/m2 の明るさ) | コントラスト比 (ダイナミックレンジ) | 代表的な調光技術 | 色域 | 最大バックライト調整遅延 (ビデオフレーム数) |
---|---|---|---|---|---|---|
Display HDR 400 | 400 | 0.4 | 1,000 : 1 (400 ÷ 0.4) | 画面レベル (LEDバックライトが画面1枚分) | sRGB:95%以上 | 8 |
Display HDR 500 | 500 | 0.1 | 5,000 : 1 (500 ÷ 0.1) | ゾーンレベル (LEDバックライトが複数枚) | sRGB:99%以上 DCI P3:90%以上 | 8 |
Display HDR 600 | 600 | 0.1 | 6,000 : 1 (600 ÷ 0.1) | ゾーンレベル (LEDバックライトが複数枚) | sRGB:99%以上 DCI P3:90%以上 | 8 |
Display HDR 1000 | 1,000 | 0.05 | 20,000 : 1 (1000 ÷ 0.05) | ゾーンレベル (LEDバックライトが複数枚) | sRGB:99%以上 DCI P3:90%以上 | 8 |
Display HDR 1400 | 1,400 | 0.02 | 70,000 : 1 (1400 ÷ 0.02) | ゾーンレベル (LEDバックライトが複数枚) | sRGB:99%以上 DCI P3:95%以上 | 8 |
Display HDR True Black 400 | 400 | 0.0005 | 800,000 : 1 (400 ÷ 0.0005) | ピクセルレベル | sRGB:99%以上 DCI P3:90%以上 | 2 |
Display HDR True Black 500 | 500 | 0.0005 | 1,000,000 : 1 (500 ÷ 0.0005) | ピクセルレベル | sRGB:99%以上 DCI P3:90%以上 | 2 |
Display HDR True Black 600 | 600 | 0.0005 | 1,200,000 : 1 (600 ÷ 0.0005) | ピクセルレベル | sRGB:99%以上 DCI P3:90%以上 | 2 |
照度(光に照らされた物体の表面の、明るさの度合い)と輝度(光源や光源で照らされた面積に対して、人が感じる明るさの量)
輝度と照度とでは、概念が異なります。
- 照度:光に照らされた物体の表面の、明るさの度合い
- 輝度:光源や光源で照らされた面積に対して、人が感じる明るさの量
参考:輝度とは?照度とは?|技術情報 – オーシャンフォトニクス
参考:輝度(cd/㎡)と照度(lx)の違い 照明計画で重要になる単位は?
照度とは「ルクス(lx)」
- 照度(Illuminance):単位は「ルクス(lx)」
- 光に照らされた物体の表面の、明るさの度合い(光源から出た光が、物体の表面にどの程度降り注いでいるか)です。人間の住環境、作業環境などの指標に用いられます。数値が大きいほど、その場は明るくなります。
参考:最低被写体照度とは?防犯カメラを夜間に使用するには
場所・状況 | 照度の目安:lx(ルクス) |
---|---|
屋外・快晴 | 100,000 |
屋外・曇天 | 30,000 |
手術台 | 20,000 |
駐車場(屋外の付属施設) | 5~30 |
映画館(上映中の観客席) | 2~5 |
満月の夜 | 0.2 |
星明かりのみの夜 | 0.02 |
闇夜 | 0.007 |
暗室 | 0 |
輝度とは「cd/m2(カンデラ毎平方メートル)」 or 「nt(もしくはnit)(ニト)」
- 輝度(Luminance):単位は「cd/m2(カンデラ毎平方メートル)」 or 「nt(もしくはnit)(ニト)」
- 光源や光源で照らされた面積に対して、人が感じる明るさの量(心理物理量)を表します。主にディスプレイの明るさの指標として用いられています。
数値が大きいほど、画面が明るくなります。高輝度の長所は、明るい室内でも、遠くの位置から画面の文字やアイコンを視認しやすくなることです。
※1nt(nit)=1cd/m2
参考:サイネージディスプレイの明るさの単位「輝度」とは?
PC用の液晶ディスプレイ・・・
目から画面までの一般的な距離である50cm~1m程度の距離で液晶ディスプレイを最大輝度にすると、明るすぎて目の負担が大きくなります。一般的に、映像や静止画の鑑賞では輝度を高めにして、Webブラウザやビジネスアプリケーションの使用では低輝度でOKです。
参考:第2回 輝度とコントラスト比は高いほど良いのか?
液晶テレビ・・・
リビングなど比較的明るい場所、かつ約1.5m~3mの距離がある状態での視認性が求められるため、高い輝度が必要です。液晶テレビの場合、500cd/m2クラスの輝度を持った製品も多くあります。
ディスプレイの種類 | 輝度の目安:cd/m2(カンデラ毎平方メートル) |
---|---|
オフィスのPCモニター | 100 ~ 150 (通常のオフィス:300lx ~ 500lxの光量下) |
スマホの液晶ディスプレイ | 140 ~ 160 |
一般家庭にあるTV | 350 〜 500 (明るくて広めのリビング) |
屋内用サイネージディスプレイ | 400 〜 700(光があまり入らない場所) 700 ~ 1,200(日差しの当たる場所) |
屋外用サイネージディスプレイ | 1,200 ~ 2,500 |
※太陽(屋外で感じる明るさ) | 2,000 |
※太陽(直接見た際に感じる明るさ) | 16億 |
※サイネージのディスプレイ:駅や店舗、施設、オフィス、公共施設などの場所で、動画や画像などを用いて情報発信することを目的に使われるディスプレイ
PCモニター選びの際に、追加で購入したいアイテム(モニターアーム/PCスピーカー/ドライアイ目薬)
PC作業の際は、快適で健康的な作業環境を作ると良いでしょう。
- モニターアーム・・・デスクにディスプレイを取り付けて、作業スペースを広くする製品
- PCスピーカー・・・パソコンにケーブルを繋ぐだけで使えるスピーカー
- ドライアイ目薬・・・ドライアイに効果の高い専用の目薬
モニターアームとは、デスクにディスプレイを取り付けて、作業スペースを広くする製品
モニターアームを使用すると、デスクにディスプレイを取り付けられます。
- モニターアーム
- ディスプレイを空中に浮かせて、本来は脚となるスペースを有効活用できる製品です。
またディスプレイの向きや位置を上下左右に調整でき(製品による)、快適な作業環境が作れます。
参考:モニタアームの選び方(各タイプの特長)
モニターアームのメリットとデメリット
モニターアームのメリットとデメリットとを知っておきましょう。
YouTube:【モニターアーム】5年間使い続けて分かったメリット&デメリットとエルゴトロン開封
モニターアームのメリット
- デスクのスペースが増える
(より多くの物をデスクに置ける) - モニターを好きな位置に持ってこれる
(目線の高さに持ってこれるため疲れづらい) - モニターを縦に2台並べられる
(横のスペースが広くない場合に便利)
モニターアームのデメリット
- モニターが、VESA規格に対応していなければならない
(VESA規格:モニター裏にネジ穴がある) - デスクの耐荷重が必要
(デスクの強度によっては、デスクが倒れたり歪んだりする) - 配線管理が面倒
(コードを収納できるタイプだと、配線がすっきりしておすすめ)
モニターアーム選びの注意点
モニターアーム選びの注意点についてです。
YouTube:【最新版】モニターアームの選び方とオススメのモニターアーム紹介 | エルゴトロン | Amazonベーシック
YouTube:【最強】Pixioの新作モニターアームがヤバい!シングルとデュアルまとめて試してみた結果…グレートですよ、こいつはァ!【Pixio PS2S・PS2D】
モニターアームの耐荷重
モニターアームが対応するモニターのインチ数と重さとを確認します。大型のPCモニターには非対応だったりします。
またモニターアームが許容する重さには、多少の余裕を持たせた方がいいでしょう。
移動の得意不得意
- 水平垂直アーム・・・縦横・前後・左右に移動ができる
- 水平アーム・・・横移動が得意
- 垂直アーム・・・上下移動が得意
「シングル」と「デュアル」
- 各モニターの可動範囲を広く取りたい・・・シングルを2つ
- モニターを2台並べてあまり動かさない・・・デュアルを1つ
- ※3画面タイプ、4画面タイプもあります。
おすすめのモニターアーム
おすすめのモニターアームを紹介します。
YouTube:エルゴトロン買う意味無し!?AmazonベーシックのモニターアームとエルゴトロンLXアームを比較レビュー
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PCスピーカーとは、パソコンにケーブルを繋ぐだけで使えるスピーカー
PCスピーカーは音声ファイルの再生に使うため、映像制作に必須です。
PCまたはPCモニターに内蔵されたスピーカーより高音質・大音量で、安価なPCスピーカーでも作業環境を改善できます。
ドライアイ目薬とは、ドライアイに効果の高い専用の目薬
PC作業を長時間していると、ドライアイになります。オフィスワークの半数以上はドライアイともいわれており、ドライアイ患者の数は、2,200万人ともいわれています。
YouTube:眼科医しか知らないドライアイを解消する方法
- ドライアイ
- 涙の量が不足したり、涙の質が低下したりすることで、目に涙が均等にいきわたらなくなる病気です。目の表面に傷を伴うことがあります。
特にパソコン・コンタクトレンズ・エアコンの使用、瞬きの減少などにより、涙が蒸発しやすくなります。
参考:ドライアイとは
ドライアイの症状
ドライアイの主な症状には、以下のようなものがあります。
- 目が疲れやすい
- 目が乾いてごろごろする
- 物がかすんで見える
- 刺すような痛みを感じることがある
- 目の奥が重たい
涙には、目を守るバリアのような働きがあります。保湿成分を補うために、保湿成分(ヒアルロン酸や油分などの粘液)の入った目薬が推奨されているようです。
また、目薬で症状が改善しない場合は、眼科を受診しましょう。
YouTube:市販で買えるドライアイに効く最強目薬【4選】
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