電源ユニットは、マザーボードに接続された各PCパーツに電力を供給します。電源ユニットはPCの性能に直接影響しませんが、PCの安定動作に関わります。
PCを自作する場合、私たちはCPU・グラフィックボードに対してお金をかけたいと思うことが多いでしょう。その際覚えておくべきことは、高性能なCPU・グラフィックボードほど電力を消費することです。
つまり電源ユニットの総出力(ワット数)が弱いと、PC全体(主にCPU・グラフィックボード)の電力をまかなえません。結果的に、CPU・グラフィックボードの性能をフルに引き出せない、もしくはPCが強制的に再起動・シャットダウンします。
よって高性能なPCパーツ(特にCPU・グラフィックボード)で組んだパソコンほど、電源ユニットも高性能であるべきです。
この記事では、電源ユニットの基礎知識をまとめています。またCG制作などを行うクリエイターに、おすすめの電源ユニットも紹介しています。
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サイズは基本的に「ATX」か「SFX」かのどちらか
電源ユニットには多くの規格がありますが、自作PCで使うのは主に「ATX」規格と「SFX」規格です。大まかな違いを説明していきます。
参考:初心者必見!自作PCパーツの選び方【電源ユニット編】
YouTube:【自作PC】SFX電源はうるさいのか?FSPなら無音【850W SFX電源 DAGGER PRO】
以下の電源ユニットは、一般的にはあまり使用されません。
参考:デスクトップパソコン用電源の種類とお手入れ方法を解説!
- 「EPS」
ATXの強化版ともいえる電源ユニット。主に業務用のワークステーション、サーバー用途で使用。 - 「TFX」
小型で細長い形状をした電源ユニット。ブック型やスリム型パソコンなどで使用。 - 「Flex ATX」
TFXをさらに薄く平たくしたような形状の電源ユニット。スリム型パソコンで使用。
規格 | ATX電源 | SFX電源 |
---|---|---|
サイズ感 | 大きめ | 小さめ |
本体サイズ (mm) | 基本のサイズ 幅:150 奥行き:140 高さ:86 ※奥行きは製品によって異なるため、PCケースに設置できるか確認する | 基本のサイズ 幅:125 奥行き:100 高さ:63 ※規格サイズが複数あるため、各電源ユニットでサイズを確認する |
価格 | 安め | 高め |
Amazonリンク | ATX電源 | SFX電源 |
電源ユニットとPCケースとの組み合わせは重要です。サイズによっては、電源ユニットがPCケースに収まりません。PCケースに関する情報は、以下の記事で確認してください。
・PCケース:性能には影響しませんが、PCケースによってエアフローによる冷却性能(各パーツをどれだけ冷やせるか)は異なります。高性能なPCパーツで組んだパソコンほど、風通しが良いメッシュパネルのPCケースを選びましょう。
PCケースとは?PCケース選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
「小容量・低価格(低変換効率な傾向)」「大容量・高価格(高変換効率な傾向)」の電源ユニットの特徴
以下2種類で大雑把に特徴を比較しています。
- 小容量で低価格な電源ユニットほど、変換効率が低い傾向にあります。
- 大容量で高価格な電源ユニットほど、変換効率が高い傾向にあります。
各項目で意図的に強調して取り上げており、実際は軽微な差でしかない場合もあります。傾向としてとらえてください。
種類 | 「低変換効率」の電源ユニット (小容量・低価格の傾向) | 「高変換効率」の電源ユニット (大容量・高価格の傾向) |
---|---|---|
消費電力 (電気代) | 無駄な消費電力が増える (電気代が高い) | 無駄な消費電力が減る (電気代が安い) |
発熱 (寿命) | 発熱しやすい 各パーツへの負荷が大きい (寿命が短い) | 発熱しづらい 各パーツへの負荷が小さい (寿命が長い) |
冷却ファン (騒音) | 冷却ファンが激しく回る (うるさい) | 冷却ファンが激しく回らない (静か) |
ケーブルの長さ (配線に関わる) | ケーブルの長さが短い (配線時に届かない場合がある) | ケーブルの長さが適切 (配線時に過不足ない) |
ケーブル数 | ケーブル数が少ない (ケーブル数が足りない場合がある) | ケーブル数が多い (ケーブル数が足りる) |
ケーブルの見た目 | ケーブルがカラフルで見た目が安っぽい (ダサく感じる) | ケーブルの色が統一されている (シンプル) |
ケーブルの形状 (配線のしやすさ) | フラットケーブルではない (配線時に扱いづらい) | スリーブケーブル (配線しやすく頑丈) |
電源ユニットのタイプ | 直出し式 (不要なケーブルを電源ユニットから外せないため、ごちゃごちゃ) | 着脱式 (不要なケーブルを電源ユニットから外せるため、すっきり) |
保証期間 | 短め(~5年) | 長め(5年~) |
出力電圧 | 不安定(ノイズが多め) | 安定(ノイズが少なめ) |
冷却ファン「流体軸受(FDB)/口径/ファンレス/セミファンレス/変換効率」
動作すると熱を持つ電源ユニットには、冷却ファンが搭載されています。多くの電源ユニットで、負荷や内部の温度に応じて冷却ファンの回転数が変わります。発熱するほど、冷却ファンの回転数は上がります。
電源ユニットによって、冷却ファンが回転するときの音量は煩かったり静かだったり様々です。近年の電源ユニットは静音性に気を配っている(ファンの軸受の改善)ため、うるさいと感じることは少ないでしょう。またPCケース内に電源ユニットが収まると、冷却ファン回転時の音はさらに小さくなります。
- 流体軸受(FDB)の冷却ファン
- Fluid Dynamic Bearing
電源ユニットの冷却ファンに採用される流体軸受は、軸受け面の潤滑により軸内部の摩擦が軽減されます。結果的に回転時の振動と熱を抑えます。また衝撃の吸収効果もあるため、ボールベアリングファンよりも静音性、商品寿命、電力消費性能が向上します。
Wikipedia:流体軸受
冷却ファンの口径が大きいほど、静かな傾向がある
口径が大きいほど風量が大きくなり、低い回転数で冷やせるため、比較的静かになりやすいです。
通常:120mm ← 普通
大きい:140mm ← 比較的静か
さらに静音性を求めるなら、高価格ですが「ファンレス」・「セミファンレス」の電源ユニットもあります。
・ファンレス:ファンを搭載していないモデル
冷却ファンなしで冷却が行われるため、とても静かに動作します。
・セミファンレス:低負荷時にファンの動作を止める機能を備えたモデル
電源負荷が約30%以下(電源ユニットによる)の場合に、冷却ファンが自動で回転を停止するため静かです。
変換効率が高いモデルは冷却ファンがあまり回転しないため、静かな傾向がある
発熱の主な原因は、変換時のロスです。
変換効率が高い電源ユニットの方が発熱しづらいため、冷却ファンがあまり回転しなくて済みます。
コスパ(値段当たりの変換効率性能)が高いのは、「80PLUS GOLD」認証取得の電源ユニットと言われます。
電源ユニットの電源容量(定格出力)は、「何ワット」がおすすめか
電源ユニットを選ぶ際の指標になるのが、電源容量(定格出力)です。PC全体で使用する電力が電源ユニットの容量を上回ると、システムがシャットダウンしたり、再起動したり、場合によっては故障します。
基本的にPCの消費電力の大半は、CPU(100W~400W程度)とグラフィックボード(200W~600W程度)とによるものです。またその他のPCパーツで、合計100W程度の消費電力となります。
・各PCパーツの簡単な説明:パソコンを構成する各PCパーツ(CPU・CPUクーラー/メモリ(RAM)/グラフィックボード(GPU)/ストレージ(HDD・SSD)/電源ユニット(PSU)/PCケースなど)の簡単な説明は、以下の記事にまとめています。
PCパーツまとめ一覧(自作したい人のための各PCパーツ解説)
・デスクトップPC(BTOパソコン):パソコンを自作する(自分でPCパーツを揃えて、自分で組み立てる)のが面倒な場合は、BTOパソコンを検討してください。
ネット上で構成パーツを指定するだけで、組み上がったパソコンが自宅に届きます。自作PCでありがちな、パーツ選びのミスも起こりません。出荷前に起動テストされているため、届いたらすぐにパソコンを使用できます。
3DCG制作のおすすめデスクトップPC【初心者/中級者/上級者】(BTOパソコンメーカー9選)
・ノートパソコン:3DCG制作のような重たい作業も、ノートPCで可能です。自宅でも色んな場所で作業したい、出先で作業したい、と思っているならノートPC一択です。パソコンに機動性を重視しない場合は、デスクトップPCの方が割安です。
出力別(低・中・高)電源ユニットの使い分け
パソコンの構成・用途によって、選択するべき電源ユニットは異なります。
PCの中で最も電力を消費するパーツである、CPU・グラフィックボードの性能に見合った(出力に適度な余力を持たせた)電源ユニットを選びましょう。
YouTube:【自作PC】電源の選び方~出力や寿命、長く使うために注意すべき点など【ゆっくり解説】
YouTube:徹底解説、PC用電源ユニット。電源容量やモジュラー数など悩みを解決!
YouTube:【容量2倍は必要?】PC電源の選びかた 地味だけど重要なパーツ!【自作PC】
CPU・グラボなどに勝りすぎる高出力の電源ユニット
・・・余計な出費となる。
CPU・グラボなどに見合った出力の電源ユニット ← おすすめ
・・・CPU・グラボの性能をフルで引き出せて、余計な出費もない。
CPU・グラボなどに劣りすぎる低出力の電源ユニット
・・・CPU・グラボなどの性能が、フルで引き出せない。
・CPU:マウス、キーボード、ハードディスク、メモリー、周辺機器などからデータを受け取り、CPUが制御・演算を行います。
CPUとは?PCパーツのCPU選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
・CPUクーラー:CPUを冷却するためのパーツで、CPUに高負荷をかけた際のCPUの性能低下や誤作動、故障などのリスクを抑えます。最も発熱しやすいPCパーツであるCPUは、冷却が常に課題となります。CPUの性能に見合ったCPUクーラーでなければ、十分な冷却ができません。
CPUクーラーとは?PCパーツ「空冷」「水冷」選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
・グラフィックボード(GPU):グラフィックボードは、画像処理に特化して計算を行うGPU(半導体チップ)を搭載しています。CG制作・映像編集などを行うクリエイター向けパソコンには、必ず搭載されています。CPUに内蔵されたGPUより高性能で、処理が高速です。
グラフィックボード(GPU)とは何かを確認、クリエイター(3DCG制作)向けおすすめ紹介
・グラフィックボード(GPU)の設定:グラフィックボードの設定を見直してみましょう。
-色深度(RGBそれぞれが表示できる色数)を10bitに設定
-ドライバーの更新(不具合の修正・アップデート)
グラフィックボードを買ったらやるべきこと(クリエイター向け)「色深度:10bit」「ドライバー更新」
電源ユニットを選択する際の目安として、大きく3種類のワット数で区分けしています。一般的に言われているわけではないため、参考程度にとどめてください。
出力 | ~550W 低出力 | ~850W 中出力 | 1000W~ 高出力 |
---|---|---|---|
PCのスペック | 低スペックPC向け (ロー) 補助電源なしグラボ搭載PC or オンボードグラフィック(内蔵GPU) | 中スペックPC向け (ミドル) ミドルクラスのグラボ搭載PC | 高スペックPC向け (ハイ) ハイエンドグラボ搭載PC |
主な用途 | 動画視聴、Web会議 | ゲーム | クリエイト (CG制作、映像制作など) |
Amazonリンク | atx3.0 550w | atx3.0 850w | atx3.0 1000w |
グラフィックボードの大まかな消費電力
特に高性能なグラフィックボードの場合、PCの総消費電力の半分以上がグラフィックボードになりえます。
ミドルクラス以上のグラフィックボードの消費電力
・・・200W~400W程度
→ 電源容量は850WでOK
ハイクラス以上のグラフィックボードの消費電力
・・・400W~600W程度
→ 電源容量は1000WでOK
各GPUの仕様に、推奨する電源ユニットの電源容量(システム電力要件)が記載されています。
クリエイターが使用するGPUは、グラフィックボードに搭載されています。グラフィックボードの端子とPCモニターの端子とをケーブルで繋いで、映像を見れます。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
・PCモニター:クリエイター向けのPCモニターは主に「解像度」「色深度」「輝度(ダイナミックレンジ)」が一般的なPCモニターより高く設定され、「色域」を定めた造りとなっています。
クリエイター向けPCモニターおすすめ3選(主に3DCG制作)「色深度」「色域」「HDR」とは
・カラーマネジメントPCモニター:プロのクリエイターが使う、正確な色調整・色再現ができるPCモニターです。キャリブレーションによって、ディスプレイの「経年劣化」と「色の個体差」をカバーします。
カラーマネジメントモニターのおすすめ2選(クリエイターのためのキャリブレーションとは)
・ケーブル(HDMI/DP/USB):ポート(端子)の性能に合うケーブル規格を選びます。ケーブルの規格によっては、グラフィックボード(GPU)やPCモニターなど各機器の性能を発揮できません。
ケーブル選びに重要な「帯域幅」「リフレッシュレート」も解説しています。
PCとPCモニターとを繋ぐケーブル「HDMI」「DisplayPort(DP)」「USB Type-C」「Thunderbolt」/帯域幅/リフレッシュレート/Wi-Fi 6E/Bluetooth
PCで使用する電源容量を計算するWebサイト、ソフトウェア
電源容量計算のWebサイトで使用する各パーツをプルダウンから選ぶと、使用電力目安(W:ワット)が表示されます。最終的に合計使用電力目安が分かります。
結果的にそのPCにおすすめの電源容量を求められます。
電源ユニットは、コンセントから供給される交流電流(AC入力:100V)を直流電流(DC出力:+3.3V / +5V / ±12V)に変換しています。
その変換時に、ロスが約20%発生します(ロスした分は熱になる)。よって電源容量は、一般的に最大消費電力の1.5~2倍の電源ユニットを選ぶべきだと言われています。
※実際には、CPUやグラフィックボードなど全てのパーツをフルに稼働させるケースは少ないです。
※合計使用電力をギリギリに満たす電源容量にするのではなく、最低でも200~300W程度の余裕を持たせた方がいいでしょう。
YouTube:電源選びで勘違いしやすいポイントを自作PC初心者向けに解説!FSP Hydro GT PRO ATX3.0(PCIe5.0)1000W
YouTube:【初心者向け】自作PCで超重要!電源の選び方をわかりやすく解説!FSP Hydro GT PRO 1000W
もしくは「OCCT」などのソフトウェアで、負荷テストによる計測方法もあります。
公式:OCCT
参考:PCのストレステストなら「OCCT」、簡単操作でモニタリング機能も豊富。「HWiNFO」関連ソフトの安心感もあり
YouTube:【自作PC】i9-9900k使用率100%での負荷テスト【空冷】
PCがアイドル時・低負荷時の消費電力は、低出力な電源ユニットの方が有利な傾向あり
現在のPCは、アイドル(何の処理も行っていない)状態で100W程度の消費電力(CPUやグラフィックボードなどPC全体の消費電力)となります。
PCがアイドル時・低負荷時の消費電力は、低出力な電源ユニットの方が有利な傾向があります。
例:アイドル時の消費電力は、基本的に850Wより550Wの電源ユニットの方が有利です。
850Wの電源ユニット・・・不利
550Wの電源ユニット・・・有利
PCの用途に合った電源容量にしましょう。
参考:アイドル状態
「80 PLUS」グレード(STANDARD、BRONZE、SILVER、GOLD、PLATINUM、TITANIUM)別の電力変換効率
効率の良し悪しにおける電気料金への影響は軽微なため、重く考える必要はありません。
PC全体での消費電力の多くは、グラフィックボードが占めます。よって電気代への主な影響は、使用するソフトウェアでのグラフィックボードの稼働具合によります。
販売されている電源ユニットの多くが「80 PLUS」認定を取得していることを売りにしています。「80 PLUS」の電源ユニットは、一定以上の変換効率を備えていることを意味します。
電力変換効率を示すグレードは6段階(STANDARD、BRONZE、SILVER、GOLD、PLATINUM、TITANIUM)
電力変換効率を示すグレードは、6段階あります。ランクが上がるほど変換効率はよくなります。
ランクが上がるほど1つ下のランクからの伸び幅は小さくなる一方で、認定を得るためのコストは上がります。よってコストパフォーマンスが高いのは「Silver」や「Gold」を取得した電源ユニットといえるでしょう。
低価格帯の電源ユニットはコストダウンのために認証を取得していない場合もありますが、取得していないからといって変換効率が低いとは限りません。
YouTube:【自作PC】電源は80PLUS ブロンズでいい?【80PLUS】
↑変換効率が「低い」:性能・価格が低い電源ユニット
- STANDARD
- BRONZE
- SILVER
- GOLD
- PLATINUM
- TITANIUM
↓変換効率が「高い」:性能・価格が高い電源ユニット
「80 PLUS」認定に要求される変換効率の一覧(負荷20%、50%、100%の時の変換効率)
以下の表は、認定に要求される変換効率の一覧です。
負荷20%、50%、100%の時の変換効率が、基準を上回る必要があります。「80 PLUS Titanium」のみ、10%時も対象です。
グレード | 負荷率 10% | 負荷率 20% | 負荷率 50% | 負荷率 100% | Amazonリンク |
---|---|---|---|---|---|
STANDARD | - | 80% | 80% | 80% | 電源ユニット STANDARD |
BRONZE | - | 82% | 85% | 82% | 電源ユニット BRONZE |
SILVER | - | 85% | 88% | 85% | 電源ユニット SILVER |
GOLD | - | 87% | 90% | 87% | 電源ユニット GOLD |
PLATINUM | - | 90% | 92% | 89% | 電源ユニット PLATINUM |
TITANIUM | 90% | 92% | 94% | 90% | 電源ユニット TITANIUM |
様々な電源ユニットの出力特性・ファンの回転数など、個別の電源ユニットの特性を知りたい場合は、以下のサイトが参考になります。
100Vの電圧を変換する際の考え方
100Vの電圧を「+3.3V / +5V / ±12V」に変換する際の効率は、電源容量の40~50%を使っている時が最も高いとされています。
容量の40~50%から外れる(0~40%、50~100%)ほど、変換効率は低くなります。
よって負荷時の消費電力が、電源容量の40~50%程度になるのが良いとする考え方もあります(そのため2倍の電源容量が推奨される)。
とはいえ電気代に換算すると誤差ともいえる程度の話であるため、神経質に考える必要はありません。
参考:80PLUSで消費電力はどう変化するのか? STANDARDからTITANIUMの電源でチェック! Text by 林 佑樹
参考:パソコンの電源ユニットについて
YouTube:【自作PC・マイニング】誰も教えてくれない電源ユニットの正しい選び方(初心者向け・マイニングの必要電力などでお悩みの方に)【前編】
電圧の種類・・・+3.3V / +5V / ±12V / +5VSB
特によく使うのが「+12V」です。消費電力の大きいCPU・グラフィックボードで使用します。
YouTube:徹底解説、PC用電源ユニット。電源容量やモジュラー数など悩みを解決!
YouTube:【自作PC】の80PLUS GOLD電源を徹底的に試験した結果・・・ | Corsair RM750x
- +3.3V・・・メインメモリ、メインメモリの周辺回路、など
- +5V・・・マザーボード上のロジックIC、各種ドライバ、など
- +12V・・・CPU、グラフィックボード、SSD、HDD、各種ドライバのモーター
- -12V・・・ほとんど使用されない
- +5VSB・・・パワーマネジメントに関する回路(スリープ、省電力モード用)
・メモリ(RAM):CPUとストレージとの間でやりとりするデータやプログラムを一時的に保存する記憶装置です。
メモリとは?PCパーツのメモリ選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
・マザーボード:CPU・メモリ(RAM)・ストレージ(HDD/SSD)・グラフィックボード(GPU)・電源ユニット(PSU)など、全ての部品はマザーボード(基盤)に接続されます。マザーボードによって対応するCPU・GPU・メモリの最大容量が異なるため、注意が必要です。またサイズ(フォームファクタ)によっては、所有するPCケースに収まりません。
マザーボードとは?PCパーツのマザーボード選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
・ストレージ(HDD・SSD):画像や動画、テキスト、音声など様々なファイル(データ)を保存するための機器です。ストレージの種類には、PC内臓・外付け・オンラインがあります。複数の手段でバックアップしておくと良いでしょう。
SSD・HDDとは?PCパーツのストレージ選びで失敗しない方法とおすすめを初心者向けに徹底解説
+12V系統の「シングルレーン(推奨)」と「マルチレーン(非推奨)」
CPUやGPUなど消費電力の多いPCパーツの利用は、「+12V」系統の出力です。
参考:電源について
参考:理想の容量や80 PLUSは?本当はもっと吟味すべき電源ユニット選び
PC用電源ユニットにおける「+12V」系統の出力は、以下の2種類あります。
+12V系統が1系統・・・シングルレーン方式(おすすめ)
1系統に無駄なく最小電力が供給できる方式。近年の電源ユニットの多くはこの方式。
高性能で高電力消費のグラフィックボードでも十分に電力供給できるため、安定動作が期待できます。
例:1系統で最大電力が使用できます。つまり、出力(ワット数)が大きいです。
+12V・・・840W
+12V系統が複数系統(2~4系統)・・・マルチレーン方式
1系統に流す電流を抑えた方式。
接続するPCパーツによっては、電力不足となる懸念があります。
例:各系統で使用できる電力が制限されます。つまり、出力(ワット数)が少ないです。
+12V1・・・360W
+12V2・・・240W
+12V3・・・240W
電源ユニットで使用するケーブルとは?各ケーブルの用途、ピンの数
電源ユニットのケーブル端子(コネクタ)は、主に以下の7種類です。
- メイン24ピン端子・・・24ピン、20+4ピン
- ATX 12V(EPS 12V)端子・・・8ピン、4+4ピン
- 12VHPWR端子(「PCIE5.0電源」とも呼ばれる)・・・12+4ピン
- PCI Express(補助)電源端子・・・6ピン(75W供給)、6+2ピン(150W供給)
- SATA(Serial ATA)電源端子・・・15ピン
- ペリフェラル(PATA)4ピン端子・・・4ピン
- FDD用端子・・・34ピン
参考:初心者必見!自作PCパーツの選び方【電源ユニット編】
参考:電源コネクタの種類
YouTube:【自作PC・マイニング】誰も動画にしない電源ユニットの正しいケーブルの接続方法・考え方(初心者向け・マイニングのケーブル接続などでお悩みの方に)【中編】
YouTube:【自作PC初心者】PC電源ユニットの選び方!電源容量は消費電力の2倍が目安。
メイン24ピン端子・・・24ピン、20+4ピン
コネクタ:メインコネクタ
給電:マザーボード
マザーボードにつなぐメイン端子です。以前の仕様の名残りで、20ピンと4ピンとに分かれている(「20+4ピン」と表記)こともありますが、20ピンだけを使うことはありません。
ATX 12V(EPS 12V)端子・・・8ピン、4+4ピン
コネクタ:CPUコネクタ
給電:CPU
CPU用の補助電源端子です。元々4ピンでしたが、現在はほとんどの場合さらに4ピンを追加した8ピンです。
※サーバー向けマザーボードが普及したため、「EPS 12V」と呼ぶこともあります。
ハイエンドマザーボードは、「ATX 12V(EPS 12V)端子」を複数備えていることもあります。
例:Z690マザーボード・・・8ピン×2が必要
複数の端子が必要な高性能CPU・高性能マザーボードを使用する場合、電源ユニットの「ATX 12V(EPS 12V)端子」の数・ケーブル数を確認しましょう。
12VHPWR端子(「PCIE5.0電源」とも呼ばれる)・・・12+4ピン
コネクタ:12VHPWR(12ボルトハイパワー)コネクタ
給電:グラフィックボード
主にハイエンドグラフィックボード向けに、最大600Wの電源を供給するコネクタです。「12VHPWR」は流れる電流量が大きく変換ロスも多く発生するため、発熱しやすくなっています。
「12VHPWR端子」がある電源ユニットは、従来の変換ケーブル(複数のPCIeコネクタから12VHPWRへ変換)を使わなくて済むため、高価格です。
場合によっては焼損して炎上するため、以下の点に注意しましょう。
・コネクタ端子の接触が悪い
→グラフィックボード側の端子の根本まで、コネクタを正しくはめ込む。
・ケーブルが曲がっている
→ケーブルを強く曲げるような行為を避ける。
参考:次世代仕様12VHPWRに注目集まる!大きく変化する最新電源事情【PCパーツ100選 電源ユニット編】
参考:12VHPWR電源コネクタの正しい接続方法と挿入不足の確認
YouTube:2分岐ケーブルの使用はタブーなんですか?【PCIe 8ピン – 12VHPWR】
PCI Express(補助)電源端子・・・6ピン(75W供給)、6+2ピン(150W供給)
コネクタ:PCI Expressコネクタ
給電:グラフィックボード
主にグラフィックボードで使用するための、PCIeコネクタを挿す端子です。6ピンと8ピンとの2種類があり、両方に対応するため6ピンと2ピンとに分離してあることがほとんどです。
グラフィックボードをはじめ拡張ボードは「PCI Expressスロット」から電力供給を受けるため、追加用という意味を込めて「PCI Express補助電源端子」と呼ばれることもあります。
グラフィックボードによっては、「PCI Expressコネクタ」を2~3本挿して使用します。1本挿しで動作した場合でも、安定動作を考慮するとグラフィックボードの仕様通りに複数本挿した方が無難です。
1本の「PCIe 8(6+2)ピン ケーブル」の最大定格電流は、「12.5A」で「150W(+12V x 12.5A)」となります。
参考:PCIeケーブルを適切に高電力グラフィックスカードに接続する方法とは?
SATA(Serial ATA)電源端子・・・15ピン
コネクタ:SATAコネクタ
給電:HDD、SSDなどのSATAを使用するデバイス
現在は、多くの機器で「SATA(Serial ATA)電源端子」が利用されるため、汎用の電源端子になっています。
多くのストレージを使用する場合は、SATAコネクタの数が多い電源ユニットを選ぶと良いでしょう。
ペリフェラル(PATA)4ピン端子・・・4ピン
コネクタ:ペリフェラルコネクタ
給電:光学ドライブなど
ペリフェラルは周辺機器という意味で、PCに内蔵する機器で利用する電源端子です。
以前は内部用の電源端子といえば「ペリフェラル4ピン端子」でしたが、「Serial ATA(SATA)」が登場してからは出番が減っています。
FDD用端子・・・34ピン
コネクタ:FDDコネクタ
給電:FDD、内蔵型カードリーダーなど
今は使われていない、フロッピーディスクドライブ用の端子です。使う機会はほぼありません。
備えていないモデルの方が多いですが、まれに変換ケーブルが付属しています。
ケーブルの種類、ケーブルの長さ
電源ユニットのケーブルは、タイプによって特徴が異なります。
参考:初心者必見!自作PCパーツの選び方【電源ユニット編】
YouTube:徹底解説、PC用電源ユニット。電源容量やモジュラー数など悩みを解決!
- フラットケーブル
- 同じ端子につながるケーブルを、まとめて1本の平らな状態にしたケーブル。
ケーブル同士が重なってもかさばりにくく、配線しやすい。
- スリーブケーブル
- ケーブル本体の外側に、カバーが付いた状態のケーブル。
複数本をスリーブで覆う・・・頑丈だが、かさばる。
1本1本をスリーブで覆う・・・見栄えがいいがばらけやすいため、コーム(留め具)と併せて使う。
モジュラーケーブル(着脱式ケーブル):プラグイン式
電源ユニット本体から分離した状態のケーブル。組み立て時につなぐ。
直出し式(電源ユニットからケーブルが取り外せないタイプ)と違い、プラグイン式は不要なケーブルが外せるため配線がすっきりしてお勧め。
電源ユニットに接続すると端子が本体から出っ張るため、電源ユニットの奥行きが追加される(PCケースの設置スペースに余裕をもたせる)。
※他の電源ユニットのケーブルを使用すると、電源ユニット・接続機器が故障する恐れがあるため、その電源ユニットのケーブルのみを使用してください。
※「セミモジュラー」は、一部のケーブルが直出しとなっているタイプです。
電源ユニットをPCに組み込みやすいかどうか、以下の点にも着目しましょう。電源ユニットのケーブルが接続先まで届かない場合もあります。
- ケーブルの長さ
- 使用するPCケースの大きさ
- ケーブルを通すスペース
- ドライブベイ(HDDを設置するスペース)の位置
電源ユニットを長く使う(寿命を延ばす)には「エアフローの充実」「高品質コンデンサー採用」「保護回路あり」
高性能なPCパーツで構成されたパソコンの場合、電源ユニットにかかる負荷も大きくなります。また「電解コンデンサー」「冷却ファン」は消耗品であり、いずれ必ず寿命はきます。
電源ユニットの交換目安は一般的に3~5年です。ですが場合によっては、10年近く使用しても故障しません。
YouTube:15年間毎日働き続けた電源。内部の電解コンデンサを測定した結果・・【自作PC】
電源ユニットの寿命を延ばすにあたり個人で努力できることは、PCケース内のエアフロー(空気の流れ)の充実です。
PCケース内の温度を下げることで、電源ユニットに限らず全てのPCパーツの温度上昇を和らげます。
電源ユニットを長く使う(寿命を延ばす)には、以下2点が特に重要です。
- 「日本製」「105℃」を採用したコンデンサーを選ぶ
高品質なコンデンサーを採用した電源ユニットは熱に強く、高負荷に耐えられます。 - 保護回路がある
多くの電源ユニットには保護回路が備わっていますが、念のために仕様を確認しましょう。
コンデンサー(電解コンデンサー):電気を蓄え、電圧を安定させる部品
電源ユニットに使用されるコンデンサーによって、電源ユニットの寿命が変わります。高品質なコンデンサーかどうかを見極める点は、主に以下の2つです。
「日本製コンデンサー」採用ならGOOD
コンデンサーは電流を滑らかにする働きがあり、品質が電源ユニットの寿命に影響します。
日本メーカー(「日本ケミコン」「ニチコン」が代表的)のコンデンサーは高品質と言われており、「日本製コンデンサー採用」はセールスポイントとしてよく利用されます。
「105℃コンデンサー」採用ならGOOD
コンデンサーは温度の影響を強く受けます。「仕様上の最大温度(大抵は85°か105°)」と「動作中の温度」との差が大きいほど寿命が長くなります。
105°の方が有利なため、「105℃コンデンサー採用」の記載があるか確認しましょう。
- 85度電解コンデンサー・・・安価、高温時の耐久性が低い、寿命が短い
- 105度電解コンデンサー・・・高価、高温時の耐久性が高い、寿命が長い
保護回路:電源ユニットに異常が発生したときに、電源ユニット自体や他のPCパーツを保護する回路
電源ユニットは、普通の使い方をしていても電圧がかかりすぎたり、内部温度が高くなりすぎたりします。危険な事故を防ぐため、電源ユニットには保護回路が備えられています。
代表的な保護回路は、以下の通りです。
- 過電圧保護回路(OVP)
- 低電圧保護回路(UVP)
- 過温度保護回路(OTP)
- ショート防止回路(SCP)
- 過負荷保護回路(OPP)
ほとんどの電源ユニットが保護回路を備えていますが、念のため電源ユニットの仕様を確認しましょう。
おすすめ「ATX3.0」対応電源ユニット(PCIe 5.0電源)/850W/1000W/1200W
「SFX」はミニITXなどのコンパクトPCで使うことが多いため、多くのクリエイターは「ATX」規格の電源ユニットを使用すると思われます。よって以下は、「ATX」の電源ユニットを取り上げて紹介します。
YouTube:PC用電源ユニット10製品を比較! Super Flower LEADEX V Gold PRO/Sea Sonic PRIME-PX-1000S/玄人志向 KRPW-GR1000W/90+ほか
YouTube:注目のPC電源4製品を中まで見せちゃう! ADATA XPG CYBERCORE、ASUS ROG-THOR-1000P2、Cooler Master XG850 PLUS、Corsair SF750
ATXの場合は、奥行きが電源ユニットによって異なります。
横幅(150mm)× 高さ(86mm)× 奥行き(電源ユニットによる)
各電源ユニットごとの仕様を確認し、PCケースに取り付けられるか検討してください。
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おすすめ電源容量:「1000W」
電源容量(出力できるワット数)は、クリエイター向けに以下に限定して紹介します。大抵の人は、1000Wあれば余裕もありつつ十分です。
- 850W
- 1000W ← 迷ったらこれ
- 1200W
おすすめ電源規格:「ATX 3.0」
高性能なグラフィックボードを使用するクリエイターは、「12VHPWR端子」のある電源ユニット(PCIe 5.0電源)を購入するのがおすすめです。
理由・・・「12VHPWR端子」のあるハイエンドのグラフィックボードに、「12VHPWRケーブル」1本で接続できる。
- 分岐ケーブルに比べて焼損リスクが少ない
(注意:コネクタを根元まで差し込む) - 配線がすっきりする
(注意:ケーブルをなるべく折り曲げない) - グラフィックボードの性能が微量程度アップする
(ベンチマークソフトによる)
YouTube:【自作PC】電源買うならATX3.0、FSP HydroG 1000W【PCIE5.0】
公式(パソコン工房):パソコン工房通販トップ 自作PCパーツ PC電源
- ATX 1.0:?年~
- ATX 2.0:2003年~
- ATX 2.2:2006年~
- ATX 3.0:2022年~ ← おすすめ
PCI Express 5.0規格の電源コネクタ「12VHPWR」が採用。
Wikipedia:ATX電源
参考:GeForce RTX 40の導入とともに刷新したいATX 3.0対応電源ユニット
参考:ATX 3.0
YouTube:【電源の疑問】12VHPWR直挿しと変換ケーブル…ぶっちゃけ性能って変わるの?比較してみた結果…FSP Hydro PTM PRO ATX3.0(PCIe5.0) 1200W 【自作PC】
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電源ユニットの交換方法
電源ユニットの交換は、大まかに以下の手順で行います。
用意するもの:プラスドライバー、ネジを入れておく容器
前準備
- PCをシャットダウンして、電源本体をオフにする
- ACケーブルを電源ユニット本体から抜く
- PCケースのパネルを外す
- 各ケーブルを外す前に、スマホで写真を撮っておくと安心
現在の電源ユニットを取り外す
- メイン電源用の24ピンケーブルをマザーボードから抜く
- CPUの補助電源ケーブルをマザーボードから抜く
- PCIeケーブルをグラフィックボードから抜く
- SATA電源ケーブルをSSDから抜く
- ペリフェラル4ピンケーブルを抜く
- 電源ユニット本体を、PCケースから取り出す(ネジを外す)
新しい電源ユニットを取り付ける
- メイン電源用の24ピンケーブルをマザーボードに挿す
- CPUの補助電源ケーブル(4ピン×2のコネクタ)をマザーボードに挿す(8ピンのコネクタは電源ユニットに後で挿す)
- PCIeケーブル(6+2ピンのコネクタ)をグラフィックボードに挿す(8ピンのコネクタは電源ユニットに後で挿す)
- SATA電源ケーブルをSSDに挿す(6ピンのコネクタは電源ユニットに後で挿す)
- ペリフェラル4ピンケーブルを必要であればデバイスに挿す
- 電源ユニット本体に、使用するケーブルのコネクタを挿す
- 電源ユニット本体を、PCケースに入れる(ネジで固定)
確認
- 各ケーブルは正しく接続されているか確認
- PCケースのパネルを取り付ける
- ACケーブルを電源ユニット本体に挿す
- コンセントプラグをコンセントに挿す
- 電源ユニットのスイッチをON(|)にする
- PCの電源スイッチをONにして、正常に動作するか確認